第49話紅花と陛下

「は、はい…私は後宮に入ってから…彼女達に蔑まれてきました…でもそれが普通、当たり前の事かと思っていましたが…王蘭様に教えていただきそれが違っていたことを今知りました。この髪を気味が悪いと影で言われて……」


涙をながし紅花は自分の言葉で伝えると、そっと髪を隠すようにうずくまる。


「よく話したな…お前の髪は日に当たると綺麗に光るな」


「陛下…」


陛下は冕冠に隠れる陛下の顔を見上げると、隙間から優しげな口元が薄らと見えた。


その瞬間なんとも心を掴まれたような苦しい気持ちになる。


「#伝__テン__#よ、紅花の女官を捕らえよ」


「ハッ!」


「お、お待ちください!何かの間違いでは!?」


女官達は顔を真っ青にして何度も頭を下げる。


「私達は何も!何も…」


「その何もしなかったのがいけないんでしょうが!」


王蘭の一言に女官達は口を閉じる。


「愛琳様…どうか…」


一人が愛琳に助けを求めた。


「なぜ紅花の女官が愛琳に助けを求める?」


衛兵に睨まれて愛琳はオロオロと今度は優麗様に助けを求めようと顔を向けると…


「嘆かわしい。王妃になろうと言うものがそんな卑劣な真似をするなど、愛琳様見損ないました・・・・・・紅花様、大変でしたね。何か困った事があればいつでも私を頼ってください」


優麗は愛琳を睨みつけると紅花に哀れみの表情を向けた。


「ゆ、優麗様?そ、そんな…私は…」


愛琳が何か言おうとするとそれを遮った。


「陛下、愛琳様はこの場に相応しく無いと思われますわ。同じ立場の妃候補を蔑ろにするなど…」


「……」


陛下は何も答えずに優麗と愛琳を交互に見つめた。


愛琳は絶望的な顔で地面に膝をついた。


「あー馬鹿らしい、もういいですかね帰らせてもらって」


私は大きな声で悪態をついた。


「なっ!まだ解決しとらんだろうが!」


「愛琳様はとりあえず紅花様に謝ればいいのでは?紅花様が許さないなら仕方ないけど追い出す程のこと?もっと責任取らなきゃいけない人がいる気がしますけどね…」


私はじっと優麗様を見つめる。


「あ、あなたが愛琳様が紅花様に不敬を働いたと最初に仰ったのに…」


優麗はオロオロと心苦しそうに話す。


「王蘭様!いくらなんでも優麗様に失礼では!?立場をわきまえた方がよろしいかと…しかも今は皇帝陛下の前ですよ!」


優麗の取り巻きの妃達が騒ぎ出した。


「本当の事を言ったまでです…それで処罰されるならお好きに!慣れてますから」


ふんっと鼻息荒く女達を睨みつけると…


「ぶっ!クックッ…」


また笑い声がする。

どうも陛下の陣営から声が聞こえている気かしてならないり


「陛下…いかがなさいますか?」


兵士達はそんなことは笑い声も聞こえないのか女性達の睨み合いに陛下の言葉を待っている。


「陛下…私、王蘭様が怖いです…」


優麗は私から隠れようと陛下のそばにそっと近づこうとした。


バッ!


すると陛下が凄まじい勢いで優麗から下がった。


「触るな…」


陛下の声に兵士達は慌てて陛下の前の女達を下がらせる。


「近づくな!不敬であろう!」


優麗に槍を向ける。


「そんな…私はただ怖くて、それよりも陛下大丈夫ですか?ご加減でも…」


心配そうに顔を覗き込もうとするが陛下はさらに顔を逸らした。


「と、とりあえず女官と愛琳の事はこちらで調査する。今日はこのくらいにしておけ」


少し怯えたような震える声で陛下が言うと優麗達は渋々頷き、お茶会はお開きとなった。


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