第39話新しいもの

数日後…また南明様が宮を訪れてきた。


「今度はなんですか…しばらくは大人しくしてたと思うんですけど」


じろりと南明様を見ながら呼び出された部屋を訪れると…


「そんな顔をしないでください。今日はいい知らせですよ」


「それはよかった」


全然喜んでいる風もなくそう答える。


「鈴麗様から文を預かってきましたが…その様子だといらないようですね」


南明様が文を取り出そうとするとその手を引っ込めた。


「あっ!すみません!いります、いります!」


慌てて謝ると呆れながら文を渡された。


中を開いて中身をじっくりと確認する。



「よかった…変な邪魔も入らずに幸せのようですね」


鈴麗様の手紙にはお礼と、雲垓様との幸せな生活が書かれていた…


羨ましい…


正直にそう思う。


やはり好きな人との生活は憧れるものがある。


そして後半には…


「南明様!!」


「はい、鈴麗様とお茶がしたい…ですね」


「何故それを…あっ!文の中身を見たんですか!?」


慌てて文を隠した。


「当たり前でしょう。後宮に届けられるものは危険な物がないか確認しているんですから」


「それはそうですが…」


なんだか納得できない、人の手紙を見るなんて前世だとかなりマナー違反な事だと思ってしまう。


「私も鈴麗様のその後が気になるので近くで待機させていただきます」


「わ、わかりました」


そう言わないとお茶もさせて貰えなそうだった。


「それと…」


南明様がまだなにか言いたそうにしている。


「なんでしょうか?」


私はもう鈴麗様の事で頭がいっぱいだった。


何を聞こうか!何をお土産に用意しようか…と…


早く帰りたい私は素っ気なく答える。


「仁様の事ですが…」


「ああ…」


そう言われて納得する。


「最近、そちらに良く行かれていると聞いていますが…」


「はい、なんか仕事の合間に来てますね。折り紙を教えてくれとか前の記憶の事を聞きたいとか…正直来すぎじゃないですか?あの人ちゃんと仕事してます?」


「そ、そうですか…仕事は…まぁしておりますが…そんなに訪れていたとは…」


南明様がブツブツと眼鏡をいじりながら呟いている。


「なんですか?彼が仕事をサボっているのなら注意しておきましょうか?」


「い、いえそれは大丈夫です…が何か変な事を言われたら報告してくださいね」


変な事?


私は首を傾げた。


南明様が帰ると護衛の兵士さんに送られて自分の宮へと帰りながらさっきの意味を考える。


あの人、常に変なんだけどなぁ…


「もう、ここでいいぞ」


すると噂の人が……


「し、しかし…」


兵士さんは仁に帰るように促されて渋々帰っていく。


「あなたまた来たの?」


「来ちゃ悪いか?それともなにか見られたら不味いものでも?」


仁はニヤリと笑う。


「見られたく無くても見るでしょ、現にコレだって…」


私は鈴麗様の文を抱きしめた。


「それはなんだ?」


「なんだって…聞いてないの?これ南明様が持ってきたのよ」


「聞いてない…南明め…」


仁は悔しそうな顔をする。


「ふふ、なんかいいライバルみたいね。でも南明様の方が上手っぽいわね」


「そんな事ないぞ。ほらこれを見てみろ」


仁は綺麗に折られた折り紙を見せる。


「あっ!手裏剣も習得ですか、結構器用ですね」


王蘭は仁から手裏剣を受け取る。


「他にも何かないか?」


「なにかって折り紙をですか?」


「なんでもいい、なにか俺が知らないものなら」


んー…何があるかな…


私は頭を悩ませた。


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