第38話再び帰還
その後王蘭は再び話を聞きに来た南明様から自分の宮への帰還を許された。
話は仁から聞いたようだが全ては信じて無さそうだ。
ちょっと頭がおかしいくらいに思っているのかもしれないがそれくらいでいいかも知れない。
「では王蘭様、今後は大人しく過ごして下さいね。陛下からお声がかかるまで…」
南明様に付き添われて宮に向かう途中にそんな事を言われた。
「お声ねぇ…姿も見た事ありませんけど…そんな可能性よりも普通の恋愛がしたいものです」
「声も姿もねぇ…」
南明様は何か含みのある言い方をする。
「それよりもいい男いたら紹介してくださいね!」
「なら…仁様なんてどうですか?」
「仁?いやぁだって彼は宦官でしょ?」
「もし、宦官ではなかったとしたら?」
宦官じゃない?そんな人が陛下の側に仕えて居る…まぁ無くはないのかな?
「それなら仁ならモテそうですね」
「でしたら…」
南明様が後ろを振り返った。
「あーでも彼は年下ですから、やっぱり無いですね。私年上が好きなんです」
「どう見てもあなたの方が年下に見えますが?」
南明様に上から下まで見つめられる。
王蘭としては年上でも葵としては年下になる、精神年齢は大事だよね。
「仁はなんかわがままそうなんで…面倒そうですね。もしかしたら陛下といい勝負かも」
「ぶっ!…そ、そうですか…それは残念」
南明様が笑いをこらえている。
わがままってところが良かったのかな?
「でも、友人としてはいい人ですね。なんか可愛いですから」
「そうですか…まぁ気が変わったら何時でも言ってください」
「それよりも年上の雲垓様のような方を紹介してください」
「考えておきます」
よしっ!
執拗く頼んで良かった!
私は後ろでガッツポーズを取った。
宮に戻ってくると…
「王蘭様~!!」
デジャブ?
凛々がこの前と同じように泣きべそをかきながら駆け寄ってくる。
「今日はスープを思う存分飲むわよ!春さんよろしくね!」
また何を理由に牢屋に入れられるかわからない!
私はただいまよりも先にスープをお願いした。
南明様は私を送り届けると仕事があるのかすぐに帰って行った。
「王蘭様、お帰りなさいませ。今日帰ってくると南明様より聞いていたのでしっかりと準備してありますよ」
「わぁ!ありがとうございます!」
南明様もやるわね。
先に春さん達に知らせておいてくれたらしい。
「王蘭様本当に良かったです!鈴麗様のあの女官も居なくなって私達には住みやすくなりました!」
凛々が嬉しそうにそんなことを言ってくる。
「あの女官長はあなた達には何かしてこなかった?」
少し心配になって聞いてみる。
「そんな事は日常茶飯事ですから大丈夫です」
春さんは気にした様子もなさそうに答えた。
「って事は何かされたのね…ごめんなさい。そこまで気が回らなかった…」
二人に謝ると春さんが驚いた顔をする。
「王蘭様、女官同士の嫌がらせなど後宮では毎日のように行われておりますよ」
そんな事を気にしている暇はないらしい。
「でも…気持ちいいもんじゃ無いよね」
私だって前世の記憶が戻る前は自分の立場が嫌になって命を落とそうとした。
今ならなんて馬鹿な事をしたんだとわかる…
自分の立場が弱いが為に女官の二人にも同じような思いをさせていた事に申し訳なく思ってしまった。
だが二人は気にした様子もなく、私が帰ってきた事を喜んでくれている。
この二人の為にももう少しここが住みやすくなるといいんだけど…
「王蘭様、お待たせしました」
二人の事を考えていると春さんが早速スープを持ってきてくれた。
「わぁ!!」
私は憂いも忘れてスープに飛びついた!
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