第100話ピンチ

「こ、こいつ…」


残りの男達はいきなりか弱そうな女に大の大人の男が二人もやられて警戒する。


王蘭は体制を整えるとサッと後ろに下がった。


「女将さん、危ないからお店に戻って…」


王蘭がそっと声をかけるが女将さんは腰を抜かしたのか立てないでいた。


「おい、誰か黄燕様を呼んでこい」


「わかった!」


その間に一人が慌てて店内に走ると黄燕が男達と一緒に外に出てきてしまった。


「おいおい、これはなんだ。まさかお前らこの娘にやられたとか言わないよな?」


黄燕が驚いて王蘭と倒れ込む二人の男を交互に見て笑っている。


「そのまさかよ!あんたも女にやられたく無かったらサッサとこの店から出ていきなさい!」


王蘭が黄燕に怒鳴りつけると、みるみるとその顔色を変えた。


「本当に女なんかにやられたのか?」


黄燕はジロっと男達を睨むと男達は青い顔で頷く。


「油断してたんだ、次は大丈夫だ」


「じゃあ来てみなさいよ」


王蘭は挑発するように手のひらを上に向けて手招きした。


「こいつ!」


男が王蘭の態度に怒りのまま飛びかかると王蘭はそれを紙一重で避けた。


対象物を無くしてよろけた男の背中に横からかかと落としをくらわせる。


「ぎゃあ!」


背中を抑えて悶える男を見て黄燕は近づくとそのまま足で踏みつけた。


「え?」


仲間だと思ってた男を足蹴にして忌々しげに唾を吐き出した。


「女にやられるなんて恥ずかしい奴だ、恥を知れ!」


「ちょ、ちょっと!あなた達、仲間なんじゃないの!」


王蘭は自分が怪我をさせた手前言いずらそうにしながらも黄燕達を見つめる。


「女にやられるような奴はクズだ。一緒に居るのも不愉快だ、今日から二度と俺の前に顔を見せるな」


黄燕は地面に転がる男達を蹴り飛ばす。


「うっ…うう…」


蹴り飛ばされた男達はコソコソと体を引きずりながら人混みに消えていった。


「お前らもやられでもしてみろ…」


残った男達に睨みをきかせる。


「わ、わかってる」


先程とは違い男達も慎重になりながら王蘭を取り囲んだ。


「一斉に行くぞ!」


「わかってる」


男達はジリジリと王蘭との距離を縮めていった。


「女一人相手に卑怯なもんね、恥ずかしくないの?」


「うるさい!」


男達は顔を見合わせると合図して一斉に王蘭に飛びかかるとその腕を掴んだ。


「捕まえたぞ!」


一人が王蘭の後ろに回り込んで腕を掴むと、もう一人が前に回りこんで近づいてきた。


「こうなっちまえば手も足も出ないだろ」


男が王蘭の体に手を伸ばす。


「ふん!」


すると王蘭は後ろで掴んでいる男の足の指を踵で思いっきり踏みつけた。


「ぎゃー!」


男はたまらずに手を離して倒れこむ。


そして驚いている前の男の顎めがけて掌底打ちをした。


男の顎がガクッと男がするとグルンと目が白目になり倒れ込む。


もう一人の男は一瞬の出来事に何も出来ずに固まっていた。


「な、なんなんだこの女!」


王蘭をみて化け物でも見るように怯え走り去っていった。


「これで残るはあなただけよ」


王蘭は黄燕をみて微笑んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る