第99話怒り

「すみません、どうかご勘弁を…」


女将さんが必死に黄燕に頼み込むが黄燕の機嫌は悪くなる。


眉間に皺を寄せてまた叩こうと手を上げた。


「女将さん!私なら大丈夫です。黄燕様のお相手をしますから…」


王蘭は黄燕の上げた手をそっと掴んで下へと下げさせる。


「黄燕様、すみませんでした。注文は如何なさいますか?」


王蘭はひきつった笑顔で黄燕の相手をする。


「最初っから素直にしてればいいものを」


黄燕はバンッ!と足をテーブルに乗せてふんぞり返った。


「この店で一番美味くて高い物をもってこい!あとは酒だ!」


「はい…」


王蘭は頭を下げながら拳を握りしめた。


厨房に戻ると女将さんがはぁーと息を吐く。


「王蘭ちゃんはこのまま裏から店を出て行って隣の店で隠れてなさい」


女将さんは早くと王蘭を店から出そうとする。


「そんな!そんな事したらあの馬鹿がまた女将さんを叩きますよ!」


「そんな酔っ払いの扱いは慣れてるから大丈夫よ」


女将さんは心配ないと笑って王蘭を裏から出そうと店から押し出した。


「女将さん…」


王蘭は申し訳なく赤く腫れた女将さんの頬をそっと触った。


「私が手伝ったばっかりにすみません」


目をうるませて女将さんに謝ると、女将は気にした様子もなくにっこりと笑った。


「王蘭ちゃんのおかげで何日分も儲けが出たのよ!気にすることなんてないわ。それよりもまた食べに来てちょうだい」


「はい!必ずまた来ます!」


王蘭はコクっと頷きお店の人達に頭を下げた。


裏の扉からそっと出ようとすると…


「おっと!何処に行くのかな?」


黄燕と一緒に来ていた男達が裏手に回って待ち構えていた。


「こ、この子は足りないものを買いに行かせようと…」


女将さんが男達の前に立ち笑って説明する。


「それなら後ろの男に行かせろ!この子は黄燕様にお酌するんだよ!」


女将さんを押して王蘭に手を伸ばす。


「あっ!」


女将さんが倒れそうになるのを王蘭はサッと受け止めた。


「乱暴はやめてください。なんなら私が相手をします」


王蘭は手を前で組んで構えた。


「王蘭ちゃん!危ないよ!」


女将さんが止めるが王蘭は我慢の限界だった。


「ははっ!女のお前に何ができる。その細い腕と足で」


男達は構えた王蘭をみて盛大に笑いだした。


「ふー……」


王蘭は深く息を吐くと大きく息を吸い込み声と共に吐き出した!


「ハッ!!」


その瞬間に長い足で男の顎を目掛けて回し蹴りをする。


「おお!」


男達は王蘭の舞い上がる服とスラッとした足に見とれて鼻を伸ばした。


ガコッ!


一番前にいた男の顎に王蘭の足がクリーンヒットすると、男はストンッと地面に座り込んだ。


「おい、何してるんだよ」


「まさかやられたんじゃねぇよな?」


顔を覗き込むと男は白目を向いて気絶していた。


「あんな女の蹴りでやられたのか!」


男達が馬鹿にしてる間に王蘭はもう一人の男の鳩尾目掛けて正拳突きをする。


足を深く踏み込んで思いっきり拳を突き出した!


「ゴブっ!」


男は声も出せずにうずくまる。


「お、王蘭ちゃん…あなた一体…」


いきなり男を二人倒した王蘭に女将さんは唖然と見つめていた。

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