第98話我慢
倒れ込むのを見て王蘭は皆が止めるのを振り切って店に飛び出しおじいさんに駆け寄った。
「王さん大丈夫ですか!」
「大丈夫、大丈夫」
王さんは茶碗をかろうじて避けたが机にぶつかり床に倒れ込んでいた。
王蘭は支えて立たせると怪我はないかと確認すると、幸い大した怪我はないみたいだった。
「よかった」
ふっと胸を撫で下ろすとキッ!と黄燕を睨みつけた。
「お年寄りになんて事をするんですか!」
「なんだ?生意気なやつだな」
黄燕は王蘭をジロっと見下ろす。
「王蘭ちゃん!すみません、この子は預かっている娘さんで…王蘭ちゃん!黄燕様に謝って!」
女将さんは王蘭の元に駆け寄り王蘭を黄燕から隠すように前に立つと頭を下げて謝った。
「すみません、まだ世間知らずなところがありまして…すぐに下がらせますから」
女将さんに謝らせてしまい、王蘭も渋々頭を下げる。
女将さんは王蘭の手を引いて裏に連れていこうとすると…
「ちょっと待て。その娘の顔をよく見せろ」
黄燕が王蘭に興味を持ったのか女将を止めた。
「いえいえ、黄燕様に失礼な態度をとったので裏で反省させますので…」
女将さんは行けとばかりに見えないように王蘭に下がれと合図する。
「私が来いと言っているんだ、今すぐここに連れてこい」
「すみません、この子だけは勘弁して下さい」
女将さんは黄燕に向かって再度頭を下げる。
「お前の意見はどうでもいいんだよ!」
すると黄燕は女将さんの頬を叩いて転ばせた。
「なっ!!」
王蘭は女将さんに駆け寄って体を支える。
「さっきから…」
王蘭は怒りからわなわなと震える。文句を言おうと黄燕を見上げると女将さんがそれを慌てて止めた。
「王蘭ちゃん、私は大丈夫。だからここは大人しくして黄燕様に逆らわないようにして…」
そっと耳打ちして真剣な顔で見つめてきた。
「でも…」
「お願い」
女将さんの言葉に王蘭は渋々頷いた。
「申し訳ございませんでした…黄燕様に合わける顔がありませんので下がらせていただきます」
王蘭は頭を下げてそのまま裏に下がろうとした。
「謝れとは言ってない、顔を見せろ」
すると下がろうとした王蘭の腕を掴んで無理やり自分の方へと引き寄せた。
「きゃ!」
王蘭は凄い力で引き寄せられ、バランスを崩して黄燕の方へと倒れ込む。
「いたた…」
引っ張られた腕が痛み擦りながら顔をあげるとバッチリと黄燕と目があってしまった。
「ほう、こんな店にまぁまぁな娘がいたもんだ」
黄燕は王蘭を上から下まで舐めまわすように見つめると下をぺろっと舐めた。
その顔に王蘭はゾッと鳥肌がたつ。
「黄燕様、すみません。その娘は大切なお客様からの預かりものなのです…どうかご勘弁を…」
女将は必死に頭を下げていた。
「私よりも大切な客がいるもんか。いいからこの娘に相手をしてもらう。ほら注文だ!」
黄燕は王蘭を立たせると自分の隣の席に無理やり座らせた。
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