第6話診察

春さんからスープのおかわりを貰うと今度は一気に飲み干した。


「んーやっぱり美味しいわ!これ春が作ってくれたのかしら?」


「はい、お気に召していただき光栄です。それは我が家の味なので…」


そういうと春の顔が少しだけ曇った気がした。


「すごく手が込んでるわね、きっと灰汁を取るの大変だったでしょう?」


「は、はい…王蘭様、よくおわかりで…」


春が驚いた顔を見せると…


「こ、後宮に入る者としてこの程度の知識は学んであるのよ!」


慌てて誤魔化してみた、確かに后妃候補が料理など作るわけないもんね…


アハハとぎこちなく笑っていると…


「王蘭様、春さん!医師の先生をお連れしましま」


今まで姿が見えなかった凛々が声をかけた。


「失礼致します」


凛々に連れられて初老の医師が入ってきた。


「先生、王蘭様のご様子が少しおかしいのです…もしかしたら頭など打ったのかも知れません。見ていただけますか?」


春が医師と話している間に凛々に診察の準備をされると


「では失礼致します」


先生が私の手を取り脈を測ると続いて目や口、頭の様子を探る。


一通り見られると眉をひそめて首を傾げた。


「見たところ何処にも異常は見られませんな、頭にもぶつけた後もなければ脈も正常、悪い所を見つける方が難しい程の健康体です」


「そ、そんなわけ…」


春は納得出来ないと先生を見下ろす。


やはり春さんは私の様子に何か感じ取っていたようだ。


診察を終えて凛々が先生を見送って戻ってくると、私は覚悟を決めて二人を呼んだ。


「春、凛々。話があります…こちらに来てください」


二人を近くに来させると…


「春に凛々、二人とも私の変わりように驚いていますよね?」


「そ、そんなことは!」


「……はい…」


凛々は慌てて否定したが、春は少し考えた後にこくっと頷いた。


「目覚めてからの王蘭様は前と別人に思えます…一体何があったのですか?」


春の心配するような顔に私は苦笑すると口を開いた。


「私は池に落ちた時に一度死んだの、そして再びここに戻ってきた。だから前の私は一人寂しく泣く王蘭は捨てて、新しい王蘭として生きようと決めたの」


「死んだ…」


「ええそう、昔の私はもういない。これからは自分が幸せになる為に生きようと思う!その為に春や凛々には迷惑もかけるし手伝っても欲しいと思ってるんだけど…どうかしら?」


私は本当の事を織り交ぜて今の状況を説明した。


ここで生きていくなら二人の協力は欠かせない、なら本当の事を言って納得してもらい手伝ってもらおうと決めた。


死んだのは本当、でもさすがに前の記憶があるなんて言えばおかしくなったと牢屋にでも入れられかねない、もう昔の王蘭ではないのだから何がなんでも生きてやる!


幸せになれたらそれなりに二人には何かしてあげたいと思っているが…どうだろうか?


伺うように二人を見ると…


「だから王蘭様はそんなにも人が変わられたんですね!でも私は今の王蘭様の方が好きです。王蘭様はお綺麗ですから笑っていて欲しいと常々思っていました!」


凛々は驚きながらも私の説明に納得してくれたようだが、春は渋い顔をしている。


「死んだ…生まれ変わった…確かに」


ブツブツと何か言いながら考えている。


私は春が何か言うのを待った。

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