第77話変?

「またな…」


仁は手を差し出して握手を求めるとその手をギュッと握り熱い眼差しで見つめて帰って行った…


私は終始唖然としてしまいその行動を無言で見ていた。


仁が居なくなり宮まで送ってくれる兵士が呼びに来るまで立ち尽くしていた。


「なんだあれ?」


陛下の事を聞きたいと言ったら仁の態度がおかしくなった。


「まさか私が陛下を好きとか勘違いされたのかな?」


それだと不味い、今度来た時に誤解をといておこう。


まぁとりあえずは今日仕入れた話を後で紅花に伝えてあげよう!


私は誤解は次に解けばいいと、足取り軽く仁の態度の事は置いといて自分の宮へと戻ってきた。







「仁様、王蘭様はなんのお話でしたか?」


同じように王宮に戻ってきた仁は南明に話を聞かれていた。


「いや、大した事はない」


そうい言うと、南明が顔をあげると険しい顔をする。


「その笑顔はなんですか?なにかいいことでも?」


「え?笑顔…」


自分の顔を触るが笑顔になっていたとは知らなかった。


「ずっとニヤニヤしてますよ、時折真顔になってまたニヤつく」


「そ、そんなつもりはないが」


私は気を引き締めた。


「王蘭様から何を言われたのか知りませんがあまり真に受けないようにしてくださいませ、彼女は少し変わった方ですからね」


「わかっている。だが唯一話せる女性の友人だ…そう友人…」


「なんか変ですね、なにか言われましたか…まさか好いているとか!?」


「ま、まぁ…近いことは言われたかな」


「え?それは…仁様にですか?」


南明は驚いた様子で問いかけた。


「いや、宦官の私ではなく陛下に興味があるようだった。なんか女性の好みの事など聞かれた」


そういうと頬が緩む。


「好みですか、それでなんとお答えに?」


「別に好みなど考えた事も無いからな、正直に後宮の臭い女では無いことだけは言っておいた」


「それって…王蘭様も後宮の方ですよ。遠回しに好きでないと言っているのでは?」


「え?いや、そんな事は…」


そう聞かれると確かにあの時の変な顔をしていた。


「大丈夫だ、その後ホッとした顔をしていたからな」


「そんなに王蘭様の事が気に入っていたのですね…まぁ私としてはお児でも身もごって跡継ぎを作っていただけるのなら誰でも…」


「子供…後継ぎ?」


南明の言う事にピンとこない。

首を傾げると南明がため気をついた。


「王蘭様にそう言われて喜んでいると言うことは陛下も王蘭様を気に入っていると言うことですよね?女性を嫌っていた陛下に比べたら大きな一歩です。しかも王蘭様も陛下を好いているなら何も問題ないのでは?」


南明が淡々と言うのをどこか他人事のように聞いていた。


「私が…王蘭を好いている?」


「え?そういう事の話をしていたのですよね」


ボッ!


仁は自覚した思いに一気に顔が熱くなり、頬を朱色に染めた。


「まさか、今気がついたのですか!?」


南明の驚いた顔になにか言い返したいが何も言葉が出てこなかった。

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