第74話お願い

「陛下に関することでお願い?」


仁様は唾を飲み込んだ。


彼の動揺する姿に苦笑する。

そりゃ陛下の事となれば、仕える身としては身構えるのは当然だろう。


だけど別に危害や迷惑をかける気はない、出来れば関わりたくなかった致し方ない。


「実は…陛下って今後宮で気になる方が居るのかなって」


軽い感じで聞いてみた。


「グフッ!!」


お茶を飲んでた仁様がいきなり吹き出した!


「汚い!」


王蘭は思わず吹き出したお茶をサッと避けた。


「す、すまん…がいきなりどうしたんだ?」


「いえ、ちょっと気になっただけで…別に知らないならいいんですけど…」


うかがうように仁様の様子を見ると明らかに挙動不審になっていた。


これは陛下に気になる人がいるのを知っているのだろう。

なら決まったようなものかな!


「気になる…女性は…まだいないんじゃないかな…」


仁様はチラチラと視線を向けて誤魔化すように言ってくる。


「そうですか? 最近後宮によく来ているそうですし、気になる人でも出来たのかと思ったんですが…」


「後宮には仕事も兼ねてだろう。別に誰とは」


なんだか言葉を濁してきた、まぁ公に言えない事もあるのだろう。


「そうですか、では次の質問もいいですか?」


「まだあるのか?」


「たくさんあります。まずは好きなタイプを」


「た、たいぷ?」


「あっすみません、理想の女性はどんな人でしょうか?」


「そ、それは…」


仁様は眉間に皺を寄せて真剣に考える。


思い出そうとしてくれているのだろうが、まるで自分が考えているように見えた。


「あっ、別に無いならいいんですよ。ほら、ほんわか可愛い子がいいのかなぁとか、小さい女らしい子が好きかなぁ…って」


紅花様を思い出しながら聞いてみた。


「別にそんなにどんなのがいいとかは無いが、臭くない女がいい」


臭くない?しかもいいって…


「あの、仁様のタイプでは無くて陛下のなんですけど…」


少し申し訳なく思いながらそう言うと…


「え?あっ!違う、陛下と私はその好きな物が似ているんだ」


「あっそうなんですか…で、臭くないってなんですか?後宮の女性が臭いとか無いと思うんですけど」


私だって臭い男なんでごめんだ。


「化粧臭いのが嫌いなんだ…いや、らしい」


「ふーん…」


なら、紅花様は大丈夫かな、いつもホワッと甘い花の様な匂いだし。


「て言うかなんでそんなことを聞くんだ、まさか陛下に?」


「はい、ちょっと興味がありまして…」


曖昧に笑うと仁様はサッと目を背けて頬を染める。


「へ、陛下も…その…多分王蘭の様な…」


仁様がしどろもどろになりながら何か言おうとしている。


「また何かあれば教えて下さいね」


「わ、わかった」


仁様はこくっと頷く。


しかし陛下に仕える人がこんな話してもいいものか?


もしバレたら仁様が罰せられるかもしれない。


「あの、聞くって言っても話していい範囲でいいですからね」


「問題ない」


仁様は自信満々に頷き返した。

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