第73話そうだん

「では、王蘭様をお連れしますね。帰りもキチンと宮まで送りお届けいたしますから」


南明様が春さんと何か会話をしている。


春さんがよろしくと頭を下げているのできっと私の事を頼んだのだろう。


「行きますよ」


南明様は春さんに軽く頭を下げて先を歩き出した。


王蘭はあとをついて行くと馴染みのある道に顔をしかめる。


「南明様…まさかと思いますがこの道って」


南明様は肯定するように笑っている。


「はい、王蘭様にはそこの方が落ち着くと思いまして」


思っていた場所に到着して、ため息をつく。


「はぁ…またここに来るとは」


王蘭は二回もお世話になった牢屋を見つめる。


「ここは人も少ないし話すにはちょうどいいのです」


「別に隠れて話さなくても…」


王蘭が聞くと、南明様は笑って何も答えなかった。


まぁいいかと王蘭は進んで牢屋に入ろうとする。


「ちょっとぐらい躊躇とかしないのですか?」


「南明様が連れてきたのに!今更躊躇してどうするのよ」


王蘭は気にした様子もなく前に入った牢屋へと入った。


そして椅子に腰掛けると南明様を見る。


しかし南明様は牢屋には入ってこなかった。


「あれ?」


声をかけようとすると


「すみませんが王蘭様、私は少し忙しくて…代わりの者を呼んでいますので」


「代わりの?」


王蘭が眉をひそめる。


「はい、少しお待ちください」


「えー!」


王蘭が困っているが南明様は気にした様子もなく護衛に声をかけて出ていく。


「もう、なんなのよ…」


王蘭は仕方なく待つことにした。


しばらく待っていると上が少し騒がしくなる、誰かが来たと王蘭は入口に目をむける。


「待たせたな」


全然悪びれた様子のない仁様が入ってきた。


「ええ、待ちました…」


少し不機嫌そうに王蘭は素っ気なく答える。


「悪かった、ほら菓子とお茶を持ってきたから機嫌を直せ」


後ろにいた護衛の人が合図をされると机にお茶と菓子を置いた。


それをみて王蘭は少し機嫌が直る。


「まぁ、お呼びしたのはこちらですからね…お忙しいなかありがとうございます」


王蘭はペコッと頭を下げた。


仁様は笑うと護衛に離れろと手を振った。


「しかし…」


護衛は渋い顔をする。


「この人は大丈夫だ、上で誰か入らないように見ててくれ」


「わかりました…」


護衛の人はチラッと王蘭に視線を向ける。


王蘭は何もしませんよーとニコッと笑って答えた。


まずはお茶とお菓子を楽しみ少し世間話をすると、仁様から話を振ってきた。


「それで?何か用があると聞いたが?」


「あっ、そうなんです。南明様と

仁様は陛下にお仕えしているんですよね?」


「え?ああ、まぁ」


仁様が何故か曖昧に返事をする。


「この間、紅花様の件で女官が代わったのはご存知ですよね?」


「ああ、あれは大変だった」


仁様が疲れたようにため息をつく。


どうやらこの件に関わったようだ!

それなら尚更話が早い!


「実は…陛下の事でご相談があるのです…」


王蘭は仁様に頼み事をするので甘えるように上目遣いで見つめた。

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