第72話はなし
春さんの料理を堪能して、王蘭は寝巻きに着替えるとベッドに倒れ込んだ。
「ふー満足、満足」
お腹を察すって穴だらけの天井を見上げていると紅花様から聞いた話を思い出した。
「さて、どうするかなぁ~」
誰に聞かせるわけでもなく、大きな独り言を吐き出す。
しかしお腹がいっぱいの王蘭はすぐに眠りへと引き込まれていった。
「王蘭様、おはようございます」
春さんの声に王蘭は目を覚ました。
「んーおはようございます…もう少しだけ…」
王蘭は布団を引き寄せると顔をおおった。
「駄目ですよ、起きてください」
春さんは躊躇する事なく布団を剥ぎ取った。
春さんのいない間、凛々なら少しならと寝かせてくれていたが春さんが帰ってきた今はそうもいかない。
のそのそっと起き上がって眠そうに立っていると、凛々がテキパキと着替えさせてくれた。
「今日は凛々とお屋敷の掃除をしますが王蘭様のご予定は?」
「掃除?必要無くない?」
王蘭は綺麗な部屋をぐるっと見渡した。
「いえ、私がいなかった間に汚れが溜まっていたようで…凛々一人では大変だったでしょうから仕方ない事です」
「すみません…」
しょぼんとしてる凛々に春さんは笑いかけた。
「気にする事はないですよ。あなたはよくやってます、私はここまで綺麗に出来てると思いませんでしたから」
凛々の成長に春さんは嬉しそうにしていた。
「本当に凛々はよくやってくれてたわ!私が手伝おうとしたけど頑なにやらせてくれなかったもの」
王蘭が笑いかけると凛々はあはは…と引きつった笑いをしていた。
「でも二人が忙しいなら邪魔はできないわね…」
どうしようかと悩んでいると…
「それなら読者などはどうですか?天気もいいですし庭園でお茶でも飲みながら…」
外を見やりそう言われると、気持ちよさそうだと頷く。
気持ちよさげな魅力的な提案に一瞬ぐらつくがゆっくりと首を振る。
その前に紅花様の件をどうにかしなければ…
「それなら少し会いたい人がいるのですがいいですか?」
「誰でしょうか?」
春さんが心配そうにする。
「ふふ、そんな心配しなくても変な人じゃありませんよ、ちょっと南明様か仁様に会えないかなぁ…と聞きたい事がありまして」
確かあの二人、陛下に仕える宦官だと言っていた。
それなら陛下の事を何か聞けるかも知れない。
紅花様から相談された時に真っ先に浮かんできた顔が二人だった。
「それなら…」
春さんは少し眉をひそめていたが宦官なら大丈夫かと頷いてくれる。
南明様には何度も会っているしね!
春さんが早速、南明様に連絡を取ってくれることになった。
「おまたせしました、何かお話がおありとうかがいましたが?」
南明様は会うなり眉をひそめてうかがうように声をかけてきた。
「なんですかーせっかく美女がお茶のお誘いしてあげたのに」
「お誘い?何かご相談があるとうかがいましたが…」
南明様がじっと見つめる。
「そのね、お茶をしながら少し話が出来たらなって…」
王蘭はサッと目を逸らした。
「いいですけどね、では行きましょうか?」
南明様が護衛に声をかけて王蘭を促した。
「え?出かけるんですか?」
王蘭はてっきりここで話をすると思っていた。
「ちょっと事情がありまして…」
南明様は有無も言わせぬ笑顔でにっこりと微笑んだ。
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