第85話気持ちの変化

「なんでいきなりあんなに近くなるのよ!」


男の人に慣れてない王蘭は仁の行動に戸惑って逃げてしまった。


仁は逃げた王蘭の背中を見送りため息を吐く。


「少しやりすぎたかな」


苦笑していると静がサッと現れた。


「どう致しますか?」


「今日はこのまま帰ろう、王蘭も今は顔を合わせてくれないようだからな」


「以外とうぶですね」


静がクックックと声を抑えて笑っている。


そこがまたいいんだ。


そんな事は口にせずに仁は王宮へと戻った。



「王蘭様どうされたんですか?」


顔を赤くして戻ってくるなりベッドにダイブした王蘭を心配して凛々が声をかけた。


「な、なんでもないの…いや凛々、ちょっと聞きたいんだけど…」


王蘭は真剣な顔で凛々をそばに呼ぶとベッドに腰掛けてもらう。


凛々の顔をじっと見つめて話し出した。


「これは…友達の話なんだけどね」


「はい、王蘭様の事ですね?」


凛々がわかったと頷くと王蘭は慌てて否定する。


「違う!友達、知り合いの話!私の事じゃないのよ…」


必死に言い訳する王蘭に凛々はわかったと頷いた、するとほっとして話を続ける。


「その…知り合いはね、友達だと思ってた人が急に男の人に見えてしまって戸惑ってるの…」


「別にいいんじゃないですか?」


凛々は何が行けないのかと首を捻った。


「だって相手の人好きになってはいけないの」


「ああ、既婚者って事ですか…」


「それは違うわ。でもちょっと事情があるの」


「うーん、それでもないか不味い事がありますか?王蘭様はその方が好きなのですか?」


「好き…よ、友達として好きだったけど今は…」


「男性として好きになってしまったと?」


「わからない、この気持ちが恋なのか…だって彼には絶対に気がないし…」


「王蘭様を好きにならない人なんて居ますか?そんな人こちらから願い下げです!」


凛々は急に怒りだす。


「あっ!違う!私の事じゃなくて知り合いよ。でも彼も私の事は友人として親しくしてくれてるの…」


「つまり向こうは王蘭様を友人として見ていて、王蘭様は彼の事を友人から一人の男性として気になると…」


コクッ…


王蘭は誤魔化すことも忘れて頷いた。


「その方の複雑な事情はわかりませんが王蘭様が友人から好きになったように、彼もまた友人から好きになるかも知れませんよ?」


「でも…」


王蘭としては宦官という事が気になっていた。


「もう少し友人としてそばに居てみてはどうでしょうか?王蘭様もその方もまた気持ちが変わるかも知れませんよ。それに気持ちが変わらなかったらその時はその時でその思いを伝えて見ればいいのではないでしょうか?」


「そ、そうね…」


年下の凛々のしっかりとした答えに気持ちが落ち着いてきた。


「でも凛々、私が陛下ではない人を好きになってもいいの?」


もう隠すのも忘れて聞いてみた。


「私は王蘭様が幸せならなんでもいいと思ってますよ。きっと春さんも同じです」


凛々が笑って扉の方を見ると春さんが微笑んで見つめていた。


「二人とも…ありがとう!」


そうだよね!こんな縮こまってるのなんて私らしくない!


どうせなら当たって砕けて次に進もう!


気持ちの整理が着いたことに王蘭は二人に感謝した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る