第26話伝言

「へー…黄さんは農民だったんですか?」


警備兵の黄さんに話しかけ続けた結果少しずつ返事を返してくれるようになった。


「はい…すみません…」


何故か出身を聞いたら謝られた。


「なんで謝ったんですか?」


「後宮のお妃様に身分もわきまえずに話しかけてしまい…」


「話しかけたのは私ですから問題ないのでは?それに身分とか関係無いですよ。私も後宮で下っ端妃候補ですからね。仲間ですね」


「王蘭様は…あまり妃っぽくないですね…」


黄さんは驚いた顔でマジマジと見つめてくる。


「ふふ、褒め言葉ですね!ありがとうございます」


ニコッと笑うと黄さんが顔を逸らした。


「それで、兵士の方はやはり農民出の人が多いのですか?」


「そうですね、しかし上官は貴族の方もいらっしゃいます」


キラッ!


その言葉を待っていた!


「へぇ…私の知り合いに〝雲垓〟って方がいるんだけどご存知ない?」


「雲垓様ですか?もちろん知っております!」


「本当に!?」


いきなり当たりを引いて私は思わず牢屋にしがみついた。


「雲垓様は陛下の信頼も厚く頼りになるし、農民での私なんかにも話しかけてくださる方で尊敬しております!」


なるほど…鈴麗様の好きな人はできる男のようだ。


これで顔もいいならさぞモテるのだろう。


「その…雲垓様ってここに来たりは…」


「牢屋の警護にですか?無いです!無い無い!」


黄さんがありえないと手を振って笑っている。


それなら…


「黄さん…下っ端仲間としてコレを雲垓様に渡して頂きたいのですが…」


私は折り鶴を黄さんに差し出す。


「なんですか、これ?」


「大事な大事な手紙なんです…」


私は柵の間から黄さんの手を握りしめた…そして目を見つめてうるうると潤ませる。


「お願いします…どうかどうか彼にコレを渡してください」


「は、はい…」


黄さんはぽっーとしながら頼りなく頷く。


「お願いしますね!あっ!南明様にもし何か聞かれたら…コレを渡して下さい!あの人抜け目無さそうですから…」


私はサラサラと同じような折り紙に文字を書くと鶴をサッと折る。


「王蘭様は手先が器用ですね!面白い折り方で…」


黄さんが折り鶴の様子を興味深げに見つめていた。


「黄さんはお子さんは?」


「はい、チビが二人…これが嫁さんに似て可愛いんです」


「ふーん…じゃあ女の子ですかね?」


「はい」


ならば…


私は綺麗な色の折り紙でチューリップを折ると黄さんに渡した。


「はい、これは花を折ってみました。娘さんにあげて下さい」


「え!?よろしいのですか?」


「コレのお礼です!もし…雲垓様がコレを読んでくれたら…もっと違うものをおって差し上げますよ!」


賄賂にしては安いものだ!


「わ、わかりました!」


黄さんは鶴を靴下の裏に隠すとチューリップは胸元にしまった…


ま、まぁ見つからない為だからしょうがないけど…


ラブレターを踏むのはやめて欲しかった。


「あっ、それと…もしそれの事で黄さんが罰せられそうになるのなら躊躇わずに差し出していただいて構いません。黄さんにそこまでの責任は負わせられませんので…」


「いいのですか?」


わけがわからずに首を傾げる黄さんにこっくりと頷いた。

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