第27話ドキドキ
黄は牢屋の護衛を任されていたが後宮の妃候補の方が
その方は美しく動くといい香りがした…浮気をするつもりはないがその笑顔を見た時にはクラっときたものだ。
しかしそれよりも驚くべきはニコニコと気軽に話しかけて来ることだ。
牢屋に入る者は大体が無口だ…これからの裁きを知っているだけにどうでもよくなるか壊れるか…
この王蘭様はそのどちらでもなかった。
まるで自分の部屋に居るように楽しみ、気が緩んでいるように見える。
よく話しかけられるのであまり答えないようにしていたのに話しやすさからつい喋ってしまった。
農民出の自分を仲間だと言ってくださった…自分も田舎の出身だからと…田舎と言っても農民と貴族では雲泥の差だ。
それでも一緒だと笑ってくださったこの方を好きになってしまった。
すると頼み事をされる、雲垓様に紙を渡して欲しいと…しかも南明様に見つからないようにと…
一応怪しまれて聞かれたら渡すようにとそっくりな紙も預かっている。
もし聞かれなかったら好きに捨ててくれと言われた。
今までそんな事聞かれた事もない、まぁ今回も大丈夫だろうと、交代の時間になり外に出ると…
「あなた、ちょっと…」
出るなり南明様に呼び止められた。
その瞬間心臓が飛び出るほどに驚いた…
「な、なんでしょうか…」
すぐに膝を着いて頭を下げて前に手を合わせた。
「顔をあげてください、牢屋にはいった王蘭様の事でお聞きしたいことがありまして、何か王蘭様と話しましたか?」
「は、はい…話しかけてきたのでそれに答えたり致しました…申し訳ございません!」
「いえ、そうだと思ったので大丈夫です。どうせ向こうが話し続けて来たのでしょう…」
まさにその通りで驚く。
目を見開いているとやっぱりと南明様が呟きため息をついた。
「それで、何を聞きましたか?」
「その…何処の生まれなのか…など…」
「もっと詳しく教えて頂きたい」
「は、はい!」
私は王蘭様との会話を覚えてる限り話した…王蘭様から聞かれたら正直に話していいと言われていたからだ。
そうでなくても南明様の前で嘘をついて見破られない自信はないが…
「なるほど…それで?何か頼まれた事などありませんか?」
「い、いえ…」
南明様の目を見れずに下を向く。
「確か…黄と言いましたね。あなたの上官は王蘭様ですか?それとも私かな?」
「南明様にございます」
「わかってるならいいです…さぁ隠してるものを出しなさい」
「は、はい…」
私は王蘭様に折ってもらったチューリップと言う花と鶴の紙を取り出した。
南明様は両方手に取るとじっくりと見つめている。
「娘に…と折って下さいました…」
「これは、見たことないですが鶴より単純ですね。数回折り返すだけのようだ」
「は、はい…娘にやってもよろしいでしょうか?」
「そうですね…」
南明様はせっかく綺麗に折られた花を広げてしまう。
「あっ…」
「大丈夫、戻せますから…」
南明様は紙を開いて透かしたりして調べた後に確かに元に戻してくれた。
そしてもう一枚の鶴を掴むと同じように開いていく…そして中に書かれた文を見つけてじっと見つめる。
「これは…王蘭様はなんと言っておりましたか…」
「え、えっと…もし何か聞かれたらコレを渡せと…」
「なるほどねぇ…」
「南明様…質問してもよろしいでしょうか?」
鶴に書かれた言葉をじっと見つめる南明様に思わず問いかける。
「なんでしょう…」
「そこにはなんと?…それと王蘭様はどのような罪を犯したのでしょうか?」
「見ますか?」
南明様はピラッと紙を裏返して見せてくれる。
そこには残念!!とたった一言書かれていた…そしてその下には自分では読めない文字が続いている。
「すみません…学がなく読めないようです。その下はなんと書いてあったのですか?」
「私も読めません」
南明様の言葉に驚くしか無かった。
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