第93話兄妹
「おじさん!これはなんて野菜なの!?」
王蘭は店先に並ぶ見たことない野菜を指さした。
「これは空芯菜だよ、お嬢さんそんなのもわからないのかい?」
おじさんが眉をひそめて王蘭を見上げると顔を見て驚いた顔をする。
「こりゃ別嬪なお嬢さんだね!可愛い子にはおまけするよ!」
おじさんはご機嫌に野菜を勧めてきた。
「今日は見るだけなんだ、悪いな旦那」
すると仁が王蘭を引き寄せてニッコリと笑って牽制する。
「おっとこりゃまた美男美女の夫婦だね!夜の為にニンニクなんてどうだい?」
おじさんは仁にまで野菜を勧めてきた。
「夫婦!?違う!違う!」
王蘭は驚いて目を開くと違うと否定する。
「え?そうなのかい?」
おじさんは首を傾げて二人を見つめた。
「私達は兄妹なんです!ねぇ、兄さん」
王蘭は仁に笑いかける。
「ああ、世間知らずな可愛い妹でな。目が離せなくて困る」
仁はさらに王蘭を自分のそばにくっ付けた。
「こりゃ怖そうな兄さんだね、お嬢さん旦那が出来たら大変だ!」
おじさんはガハハと笑った。
「妹はしっかりしてるから大丈夫です」
「おっと怒らせちゃったかな?お詫びにこれをあげるから許してくれ」
おじさんは笑いながら果物を二つくれた。
「いいんですか?」
王蘭がそれを受け取る。
「これでお兄さんの機嫌を直してくれ」
「ふふ、お兄さんはそんな事で怒りませんよ。ねぇ」
王蘭が仁の方を振り返ると仁は同意するように優しく微笑んだ。
その顔を見ておじさんはやれやれといった感じで肩をあげた。
「知らぬは本人ばかりかな」
おじさんの呟きは王蘭には届かなかった。
王蘭はおじさんに貰った果物を食べながら市場を歩く。
「食べながら歩くのに慣れてますね?」
その様子に静がじっと見つめてきた。
「ま、まぁ妃とならばいつなんどきも食事を取れるように意識してるの」
王蘭がどきまぎと答えると仁は意外そうな顔をする。
「王蘭は妃になる気はあるのか…」
「い、一応後宮にいるからね…」
さすがに堂々と陛下に仕える人達の前でそんな気は無いとは言いずらかった。
「そうか…」
それを聞いて仁は嬉しそうな顔をする。
あっ…
王蘭はそんな仁の顔を見逃さなかった。
やっぱり陛下を慕っているって言うと嬉しいのね…
自分には気がないのだと感じてしまった。
「よし!」
王蘭はパシっ!と手を叩いて気分を変える。
今はただの王蘭だ、後宮にいる訳では無い!
ただの女の子として楽しもう!
「仁兄さん!次はあっちに行ってみよう」
王蘭は仁の腕を掴むと気になるお店へと引っ張って行った。
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