第8話新たに

鈴麗リンレイ様聞きましたか!あの溺れた王蘭様が意識を取り戻したようです!」


鈴麗は女官の言葉にピクっと少しだけ反応する。


「そう…死ななかったの…可哀想に」


そっと呟くと顔を見られないようにフーっとため息をついた。


「あんな皇帝陛下にも相手にされない方ですからね、きっと嫌になって自殺したんじゃないかって女官達の間で噂になっております!」


「自殺…王蘭様ってどんな方だったかしら?全然覚えがないのだけど」


「物静かで暗い感じの方ですね!鈴麗様とは正反対です!」


「そう…なの…ちょっと会ってみたいわ」


「え!?王蘭様にですか?正紀に一番近いと言われる鈴麗様が会う価値など…私は感じられませんが…」


女官が顔を曇らせた。


「何故池に落ちたのか聞いてみたいだけよ。不敬があればすぐに兵を呼ぶから大丈夫よ」


どうせなら詳しく聞いてみたい。


鈴麗の言葉に女官は頷くしか出来ずにすぐに王蘭の所に文を送った。





「これは…何かしら?」


次の日春さんから渡された文を眺めて眉をひそめた。


「招待状にございます。正紀候補の鈴麗様からのお茶のお誘いですがどうなさいましょうか?」


「どうなさいましょうかっていかないと不味いんじゃない?位が上の后妃ですよね?」


「そうでございますが、王蘭様はまだ起きたばかり…体調も優れぬのにお茶に誘うなど…何か良くない予感が致します」


「んーでも体は元気よ!昨日たくさん寝たしほぼ回復してるわ」


私が心配ないと、腕をあげてブンブンと振り回す。


「王蘭様、はしたないですよ…」


「ああ、すみません…」


春さんの顔がひくついたのをみてサッと手を下ろした。


全くもって后妃と言うのは窮屈だ、これなら町娘の方が楽で楽しいだろうな…出会いも多そうだ。


昨日は寝ながら今後の事についた考えていた。


ここを上手いこと追い出されて家からも勘当とかされるのが理想なんだが…


その為には目立たずに何かしらいい情報を仕入れないと…なので…


「春さん!私このお誘いのってみます!なにを企んでいるのかも気になるし…それに後宮内の揉め事はご法度ですよね?」


「それはそうですが…それは表向きだけです…裏では…」


春さんは心配そうに口を噤んだ。


「ふーん、やっぱり裏があるのね!なら尚更色んな人から話を聞かないと!凛々、早速返事を返してきて!楽しみにしてるって」


「はい!なら王蘭様も綺麗に着飾らないといけませんね!楽しみです」


凛々は嬉々として文を受け取ると早速と部屋を出ていった!


「あっ!」


春さんが何か言おうとする前にもうその姿は見えなくなっていた。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る