第44話紅花

優麗様の周りの取り巻きに一人だけ少し容姿が違う女性がいた。


女性と言うよりは女の子…と言った方が的確かもしれない。


背は凛々程で小さく髪は薄い茶色でこの国では珍しい色だった。


なんかお母様に似てる。


王蘭の母も色素が薄く肌が白くて髪が薄い茶色でよく異国の人だと勘違いされたらしい。


でも父がとても愛してくれたおかげで幸せだったと聞いたことがある。


もう会えないだろう母に似てる面影にその女の子を王蘭は目で追っていた。


その視線に気がついたのか春さんが声をかけてくる。


「王蘭様、紅花(ホンファ)様に何か?」


「あの子、紅花って言うの?」


「はい、珍しい方ですよね。ここよりかなり遠いところの出身だとか…あの様な服は見た事がありませんわ」


そう言われて服に注目すると確かに周りの后達に比べて浮いている。


そして浮いてるのは服だけではなかった。


皆紅花様を遠巻きにして、怪訝な顔を向けていた。


ここでも、いや、ここだからこそ異端児ははじき出されるのかもしれない…


「きゃっ…」


すると紅花様は一人の女性に足を踏まれてつまずいてしまう。


「あら、小さくて見えませんでしたわ!確か…紅花様ですよねそんなところに座って何を?ああ!紅花様のところでは地面に座るのが普通なのですか?」


クスクス…


紅花様は馬鹿にされたように見下ろされて悲しそうに俯く。


そしてそっと立ち上がって泥を払った。


「ねぇ、紅花様の女官はいないの?誰も助けようとしないんだけど…」


なんだか心配になって春さんに聞いてみる。


「いえ、居るはずですよ。後宮で女官が付かないなんて有り得ません…紅花様の女官は…ああ、あそこで何もしないで見つめてる人達ですね」


春さんに言われて見てみれば紅花様の女官は取り巻き達と一緒におり、同じように紅花様を笑っていた。


「なにあれ…」


「后候補の方も力がなければ女官に舐められます。本来なら誰かに話せばすぐにでも女官が罰せられるはずですが他の方々も結束しているようですね」


春さんは嘆かわしいと女官達に怒っている。


「本来なら守り仕えるべきお方が困っているのに一緒笑うなど女官失格です!」


「そうね…でも女官失格の前に人として失格だわ!」


私はスクッと立ち上がった。


「え?王蘭様」


「どちらに行かれますか?」


春さんと凛々は突然立ち上がった私に唖然とするが今は二人に構う余裕はない。


私の顔は至極冷静だが中は腸が煮えくり返っていた!


「二人はここに居てね、絶対に動かないように!」


そういうと近づきたくなかった女達に向かってずんずんと歩き出した!

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