第43話つまらん

名前も知らない后候補の女性はぷりぷりと何処かに行ってしまった。


「王蘭様、大丈夫ですか?」


凛々が後ろからそっと声をかけてくる。


「平気よ、あんなの想定内、屁でもない」


「へ?」


「あっ失礼…」


私は笑って口を隠して誤魔化した。


「王蘭様、あちらの方が空いております。少し端の方ですが…」


春さんが申し訳なさそうに木で影になり薄暗い広場の端を見つめる。


「あそこね!全然OK!影があるから日にも焼けないし最高の場所じゃない!」


うるさい女共も少ないし…とは決して言わずに移動する。


春さんと凛々が手早く支度を済ませて私が座る椅子を用意してくれる。


私はそれに腰掛けると今回の幹事役の候補者の優麗様が声をかけた。


「この度はお茶会におこしくださりありがとう。陛下に仕える身、皆でお互いを磨きあいましょう」


「「「「はい!」」」」


優麗様の取り巻きなのか数人の候補者達が声を合わせる。


見れば優麗様を取り囲む様に机を並べていた。


まさに取り巻き!


その後も何か喋っているが興味無いので話を右から左へ受け流しお茶をたしなむ。


面倒な集まりだが外でお茶を飲むのはピクニックみたいで楽しかった。


爽やかな風を感じてフーっと息を吐く。


このうるさいキャピキャピ 話す甲高い声さえなければ最高なのに……


一人たそがれていると何処かの宮女が出した箱から甘い匂いが風に乗ってやってきて鼻をかすめた。


「春さん!春さん!私もお菓子だして!」


小声で春さんに頼むとシッと指を口に当てて静かにするようにと睨まれる。


「はーい」と口パクで返事をして大人しく話が終わるのを待った。


「・・・・・・では楽しいお茶会にしましょう」


優麗様の挨拶がようやく終わったようだ!

内容は聞いていなかったのでわからないがどうせ大した事は言ってないだろ。


それよりもお菓子が食べたい!


もういいよね?


と春さんに瞳で合図を送るとため息をつきながらも用意してくれる。


最近わかったが春さんは厳しく見えて意外と私に甘い!


怒りながらも最後は私の言うことを優先してくれるのだ!


「だから春さん好きよ」


「えっ?」


春さんは急に私にそんな事を言われて戸惑っている。


「何を言ってるんですか…そんな事いってもお菓子は増やしませんよ!」


顔を逸らしてお菓子を用意する。


しかしその横顔は嬉しそうだ。


実際に用意されたお菓子はいつもより盛られていた。


「春さんいいなぁ~王蘭様に好かれてて…」


凛々が私達の会話に小さな頬をふくらませた。


まるでリスのような可愛さに思わず凛々を抱き寄せる。


「もちろん凛々だって可愛くて大好きだよ!」


「お、王蘭様!」


凛々は抱き寄せられびっくりしているが決して嫌そうではなかった。


「ほら、凛々王蘭様から離れなさい。王蘭様もここは御屋敷では無いのですから人目に気をつけて下さいませ」


「大丈夫、大丈夫!誰も私の事なんて気にしないし見てないよ」


笑って周りを見れば皆優麗様に気に入られようと彼女の周りに集まっている。


「あれ…」


そんな中に一人気になる人を見つけた。

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