第36話仁視点

仁は目の前で自分は前世の記憶があるという女の子を見つめた。


この王蘭に会ってからというものなんだか女性の見た方が変わった…


女とは(特に後宮の)皇帝に色目をつかい己以外を潰し合いのし上がっていく女と言う獣だと思っていた。


しかしこの王蘭と言う女は違った。


皇帝である自分に興味がなく、着飾る事をしない。


聞いた事のない知識を披露すればそれは前世の記憶だという始末…


半分は信じてないがもう半分はなんだか納得してしまった。


そして宦官だと嘘をつく私と友になったと言う…


女の友などというのは初めてだった。


「それで仁は鶴は折れるようになったの?」


「れ、仁…」


いきなり呼び捨てにされて戸惑う。生まれてこの方呼び捨てにされる事など数える程しかなかった。


「友達なんだから呼び捨てでもいいよね?私の事も王蘭でいいよ」


そうだ、この女は私の事が皇帝だと知らないのだ…


この王蘭も知ればその態度をコロッと変えるだろう…今はそれが無性に嫌だった。


「わかった…」


なので私は呼び捨てにする事を…嘘を続ける事を選んだ。








私は仁から折り紙を見せられる。


「へー!上手くなってる!鶴は完璧だね!」


「だろう!練習すればこの程度…あのカラテと言うものも興味があるな」


「あれは教える程の技術はないから駄目、それに宦官のあなたが使う機会なんてないでしょ?」


「ま、まぁそうだな…でもたまにそれを見せろ」


「ハイハイ、何か持ってきてくれたらね!」


「な、何!?金を要求する気か!」


「違うよ、お菓子とか甘い物とか食べ物とか」


「要は菓子だな…」


「対価交換よ!見たきゃそれなりの誠意を見せろって事!」


「わかった…美味い菓子が手に入ったら持ってくる」


「やった!仁サイコー!」


わかってる!と王蘭はバシバシッと仁の背中を叩いた。


「さいこ…?」


「いいやつって事よ!」


私は上手くおだてて美味い菓子を持ってくるように頼んでおいた。


そのあとはもっと違う折り紙はないのかと聞かれたので男の子なら好きな手裏剣を折ってやる。


「コレは!?」


仁は気に入ったのか手裏剣を掲げて目をキラキラとさせた。


「コレは手裏剣って言う忍者が使う飛び道具だよ、コレは紙だからあんまり飛ばないかもしれないけど…こうやって投げるのよ」


私は手裏剣をもってシュッ!と投げた。


紙の手裏剣は風を切って飛ぶと壁に激突する。


「コレは…なかなか興味深い…そのニンジャとはなんだ?」


「忍者…は…忍んでる者?こう…身体能力が高くて…ピョンピョン跳ねて…敵をやつける…」


ちょっと忍者に興味が無さすぎて知識不足だった。


「ふーん…忍びか…」


「あっこの国にもいるんじゃない?忍者って呼び名ではないけどひっそりと任務をこなす人とか?暗部とか諜報員とかかな?」


ギクッ…


仁の肩がピクっと動いた。


「やっぱりいるのね!今度連れてきてよ」


「考えておく…ではそろそろ行くとしようかな。また暇になったら来る」


仁はいそいそと帰り支度を始めた。


ちゃっかりと折った手裏剣を拾って懐にしまっている。


「ではまた…」


仁はさっさと帰ってしまった。


「なんだ?」


私は仁のおかしな様子を見つめていた。

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