第31話交渉

「わかりました…その代わり私達も近くに…」


「それは…」


話を聞かれるのはよろしくない。


顔をしかめていると南明様が微笑んだ。


「近くには居ますが部屋の端にいます、話し声までは聞こえないでしょう」


「わかりました…」


まぁ目的は鈴麗様の手紙を渡すこと、最悪それだけでも出来れば…


「わかりました、なら雲垓様をこちらの牢に入れてください。それなら同じ部屋でも構いません」


「牢屋に…?」


「何か問題が?どう見ても私より強い雲垓様なら何か出来るはずはありませんよね?それともこの国の兵士の方はこんなか弱い女一人に負けるような武人なのですか?」


「雲垓…」


南明様が声をかけると雲垓様が鍵を開けて中に入ってきた。


柵の間から南明様に鍵を手渡す。


「女性ですが油断ならない方です…気をつけるように」


「はい…」


何かコソコソと 言葉を交わして南明様は仁様と階段の近くまで下がって行った。


「雲垓様、先程の無礼な言葉…申し訳ありません。この国を守る兵士の方を侮辱する気は無いのです。ああ言わないと南明様が入れてくれないと思いまして…」


まずは先程の言葉を雲垓様に謝った。


「い、いえ…それで話とは?」


「えっと…少しこちらに来て貰えます?ここだともしかしたら話が聞こえてしまうかもしれなくて…」


雲垓様を動かしてその大きな体で死角を作ってもらう。


私の体は雲垓様で隠れて向こうの人達にはよく見えないだろう。


「今から何をしても驚かないで静かにしてて下さいね」


私はそう注意して自分の胸元を開いた。


「ちょ!ちょっと!!」


雲垓様がいきなり服を乱した私の姿に慌てる。


「静かに!」


声を落として雲垓様を睨みつける。


雲垓様はピタッと口を閉じて視線をチラチラとあちこちに動かしていた。


私は胸の間に隠しておいた手紙を取り出す。


「すみません、隠せる場所がここしか思いつかなくて…私、鈴麗様からこちらを預かってきました」


「鈴麗!?あっ…王蘭様は鈴麗を池に落としたと言う…」


私の事を知っていたのか顔が変わった。


目の力が強くなりじっと見つめている。


「それは誤解です、まぁそれは後で南明様にでも聞いて下さい。私は鈴麗様の友人です!その証拠にこの手紙を預かってきました。とりあえずそれをこっそりと読んで下さい!鈴麗様は今は後宮の人間です…それが陛下以外の男性に手紙を出したとなると…困るのは鈴麗様なので見つからないようにしてくださいね!」


「わ、わかりました」


雲垓様はそれを受けると停止する…


「どうされました?」


「すみません…コレはどうやって開けばよろしいのでしょうか?」


体の大きな雲垓様が小さな鶴の折り紙を大事そうに掲げる。


「プッ…すみません、今開きますね」


私はそのギャップに思わず笑って鶴を受け取った。


手紙を開いてあげると雲垓様に再び手渡す、彼は食い入るように鈴麗様の手紙を読んでいる。


「確かに鈴麗様からの手紙でした…この度は鈴麗様の命を救ってくださったのですね。鈴麗様に変わってお礼申し上げます」


雲垓様が深く頭を下げた。


「と、言うことは鈴麗の気持ちに?」


「しかしそれは出来ません…」


雲垓は寂しそうに首を振った。

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