第30話ニヤッ

「おはようございます。王蘭様」


朝から思った通り南明様が顔を出した。


しかも待っていた相手と思われる人も後ろに付いてきている。


ガタイが良くてどう見ても兵士、髪は黒く短く細い切れ長の瞳が素敵だ。

鈴麗様の相手で無ければ恋人候補にしたいくらい好みのタイプだった。


そして予定にない余計な人もついてきていた。


「おはようございます。南明様に仁様…それに…後ろの方は初めましてですね」


「雲垓と申します、王蘭様」


よっしゃ!


王蘭は心の中でガッツポーズをする。



王蘭が黄に持たせた手紙はどれもダミーだった。もしバレて黄さんに罰でも与えられたら申し訳ないので何かあると思わせる手紙を持たせることにした。


相手はもちろん雲垓様。


あの疑り深そうな南明様なら絶対に何かあると聞きに行くと思った、しかももう一枚の方には残念でしたとこちらの文字で書いた後、前世の文字で〝#明日お会いしましょう__・__#〟と書いておいた。


通じるか分からないが南明様なら解読出来たとしても気になって聞きに来るのではないかと思っていた。


「まずはこちらから…この紙はなんでしょうか?」


南明様が私が折ったチューリップと鶴を取り出した。


「ああ、それは黄さんに可愛い子供がいると聞いて鶴と花を折って差し上げました。なぜ南明様が?」


とぼけた顔で南明様を見つめる。


「それはいいとしてこの中身です。中になんと?」


「えっ!中を見てしまったんですか!?」


驚いたフリをすると内容が気になったのか後ろの仁様が食いついた。


「やはり文字なのか?」


よかった、やっぱり読めないのか…


「たわいのない言葉です」


なんでもないと首を振る。


「それと…雲垓様とは面識がないはず、先程も#初めまして__・__#と言っていましたね」


「ええ、それは本当です。でも私は雲垓様にどうしてもお会いしたかった…」


「私に?」


南明と仁は驚く雲垓を凝視する。


「南明様、そこに書いてある文字の内容をお話します。その代わり…」


チラッと雲垓様を見つめる。


「彼と話をさせろ…ですか?」


「ご名答~」


ニコッと笑って手を叩いた。


「あなたが本当の事を話すと言う保証もないのに?」


「そんな駆け引きで嘘などつきません。まぁ信じるか信じないかは南明様次第ですが…でも聞きたくありませんかその中身…良かったらその文字の事もお教えしますよ…」


南明様はグッと顔を崩した。


頭のいい人は知らない事がきっと嫌だろう…


王蘭は南明様が答えを出すのをじっと待った。

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