第63話陛下

「それは・・・・・・何を見てそうお思いに?」


「あの時愛琳様が陛下に許しを乞うように近づいて行ったんですよね。それたら陛下が固まってしまっていて、あの時口元しか見えませんが怯えているように見えました。それに後宮に来てあんなに可愛い子達がいるのに近づこうともしなかった」


でも・・・・・・紅花にはちゃんと向き合ってたのよね。


王蘭は南明を見つめて自分の考えが間違っているのか確認する。


南明は軽く頷く。


「半分ほど当たりです。陛下は後宮の女が嫌いなのです」


「何それ!それじゃあここにいる子達はなんのためにいるのよ」


「それは・・・・・・陛下にも色々とあるのです」


まぁ確かにこんなドロドロとしたところにいたら嫌にもなるかもしれないが、そうじゃない女の子達だっている。


紅花様は陛下の事を優しいといっていて好意をもっていた。


「少しは後宮に来てみんなの事を見てくださるといいんですけどね」


王蘭はボソッとつぶやいた。


「すみません、我々も努力致します」


「頼みますよ!こんな後宮に遊びに来る 暇があるなら陛下を連れてきて下さいよ!」


「え!王蘭様も陛下にご興味が?」


南明がパッと顔をあげる。


「私のところはいいですから、ほら紅花様のところなんていいんじゃないですか?」


「そっちですか・・・・・・」


「そっちってどっちよ?」


王蘭は南明が何故ガックリと肩を落としているのかわからなかった。





その頃仁陛下は・・・・・・


「クッシュン!」


「陛下!大丈夫でしょうか!?」


陛下のくしゃみに連れ添っていた文官達が心配する。


「問題ない」


何故か急にくしゃみがしたくなりそっと鼻を押さえた。


「陛下、紅花様の宮に到着致しました」


「ああ」


文官が屋敷の戸を叩くと中から春が顔を出した。


「ようこそいらっしゃいました」


春は皇帝陛下の姿にすぐに扉を開くと横に避けて膝を着いて頭を下げる。


春の姿に思わず仁は声をかけた。


「何故お前がここにいる?」


「は、はい。私は王蘭様の女官にございます。この度紅花様の女官が戻るまで紅花様のお世話をする様に言われて参りました」


「なるほど、王蘭らしいな」


陛下の言葉に春は思わず顔をあげた!


「えっ?」


「あっいや、紅花はいるか?新しい女官を手配したんだが」


仁陛下がチラッと後ろを振り返ると女官達が外で膝をついて待っていた。


「はい、すぐに呼んで参ります」


春はサッと立ち上がって紅花様の元に向かった。


「紅花様、皇帝陛下がお越しくださいました。女官達をわざわざ陛下自ら連れてきてくださったようですよ」


春は笑顔で紅花様に声をかける。


「え!?陛下が・・・・・・ど、どうしよう!この格好で大丈夫かしら、春さん変なところはないですか?」


「ふふ、大丈夫ですよ。とても可愛らしいです」


春がにっこりと笑うのをみて、紅花はほっとして背筋を伸ばして陛下の元に向かった。

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