第104話悩む

「どうしよう…」


王蘭は悩んだ、黄燕の離れている今なら頑張れば振り切って逃げる事はできそうだがそうなるときっとこの人達があの男から罰を受けることになるだろう。


ならやはりあの男をどうにか説得して返して貰うしか無さそうだ。


「あの…王伉様ってどんな方なんですか?」


息子があれなら父親に頼み込んでみようかと聞いてみる。


「王伉様なら今はなんでも大事な人に会うと出ていっていつ戻るか分からないよ」


「そうなんですか…」


「悪い事は言わないから大人しく言うことを聞いてなさい。そうすれば痛い思いはしないですむからね」


そう言われるとごめんよと謝りながら腕を縛られる。


「逃げられると私達が叱られるから…」


顔を逸らして言われてしまう。


「わかってます。大丈夫ですよ、自分でどうにかしますから」


「え…」


王蘭がニコリと笑うと奥から黄燕が怒鳴りつける。


「何をモタモタとしている!さっさと離れにその娘を連れていけ!」


「は、はい。すまないがこっちだ、自分で歩けるか?」


王蘭は頷くと従者の後ろをついて行った。


広い庭を歩いて行くと奥にごじんまりとした建物が見えてきた。


確かに立派な家だが後宮の暮らしを見ているので何となく小さく感じる。


「へーなんか意外と小さいですね」


「何!?」


王蘭のつぶやきに黄燕がジロっと睨みつけた。


「いえ、黄燕様程の人が住むには抑えめだと感じただけですけど」


黄燕は離れをじっと見つめる。


「それもそうだな、女もまだまだ増えそうだし今度もっと大きく作ってもいいかもな…」


黄燕は早速従者にその事を話して職人を呼ぶように指示を出していた。


「ちょっと話してくるからそいつを中に入れておけ」


黄燕が従者と何処かに行くと王蘭は離れへと入れられる。


中に入るとぷーんと甘ったるい匂いが立ち込めていた。


「うっ!」


王蘭は思わず鼻を押さえた。


「こちらに…」


部屋にはいくつかの大きな鳥籠の様な柵が作られていて中にこんもりと膨らみがある。


その空いてるひとつを開けられて王蘭が中に入ると外から鍵をかけられた。


ある意味牢屋である、中からは開けられずとりあえず中の様子をうかがった。


人がゆうに立てる程の高さの鳥籠は王蘭が足を伸ばして寝れる事もできそうだ。


床にはふかふかの高級そうな布がいくつか置いてある。


王蘭はそこにドカッと音を立て、胡座をかいて座り込んだ。


「キャッ!」


すると王蘭がたてた音に隣の籠から女性の声が聞こえる。


「誰か…いるの?」


王蘭が恐る恐る声をかけると布の膨らみから女性が顔を覗かせた。


「あなたも黄燕様に捕まったの?」


「あなたもって事はあなたも?」


女性は悲しそうにこくりと頷き頷いた。


「私だけじゃないわ」


そういうと他の籠からも女性が顔を出した。

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