第105話行方

王蘭は女性達から話を聞くと皆王蘭と同じように捕まってここに連れてこられたようだ。


「家に帰りたい…」


しくしくと一人が泣き出すと他の子達も涙を浮かべる。


「どうにか脱走は出来ないの?」


「一度隙をみて、逃げ出した子がいたんだけどすぐに捕まってしまったの…そのあとは罰として食事も抜かれて叩かれたりして…大人しくしていれば痛い事はないから」


その時の事を思ったのなブルっと震えていた。


「あいつ…こんな事をしていたなんて、こんなの犯罪じゃない!誰も何もしてくれないの?」


「ここは離れだから声も通りには届かないの、それに黄燕に逆らう人なんていないわ」


「だからって…」


王蘭は諦めてて死んだような目をする女性達を悲しげに見つめた。





仁は少し前にこの町の視察に静と町の案内役と町外を回っていた。


「こちらの道がこの間の雨風で崩れてしまったようです」


静が馬を引きながら仁を案内する。


「ここが通れないとなると何処を通る?」


「森の道や遠回りをしてかなり労力や時間を使うようです」


「わかった、直ちに予算を組んで修繕しよう」


「ありがとうございます」


視察に同行していたこの町の顔役の王伉は仁に頭を下げた。


「これで町の者たちも安心できます。どうでしょうこれから屋敷で食事でも…美味しい酒に綺麗な女性もご用意出来ますよ」


王伉が笑って誘ってくるが仁は笑顔で断った。


「誘いはありがたいが待たせている者がいるのでな、それに他の所も回りたい」


「わかりました」


王伉は頷くと次の視察場所を案内する為に歩き出した。



予定の視察を終えて仁と静は王蘭を預けた店へと戻ってきて唖然とする。


そこには店内は少し荒らされ客はおろか女将も王蘭の姿もなかった。


「なにがあった…」


仁が店内に入り様子をうかがっていると


「すみません、今日はもう店じまいです」


厨房から人が出てきて、仁達をみて目を見開いた。


そして裏に向かって声をかける。


「女将さん!仁様達が戻って来られました!」


するとドタドタと足音を立てて女将が出てくると仁の前で土下座する。


「申し訳ございません。お預かりした大事な子を奪われてしまいました…」


「奪われた?」


静が聞き返すと女将は顔をあげてビクッと震えて顔色が真っ青になる。


「奪われたとはどういう事だ…」


仁の怒りを孕んだ声に店内はヒンヤリと冷たくなった。


「仁様、落ち着いて下さい。まずは話を聞かなければ」


静が仁の肩に手を置こうとするとそれを払い除けて静の首元を掴んだ。そして壁に押し付ける。


「なぜ王蘭を見てきなかった!」


「私は仁様を守る事が最優先です。仁様のそばを離れる訳にはいきませんから」


静が静かに答えると仁はフーっと息を吐き手を離した。


「すまない、取り乱した」


「いえ、それよりも王蘭様の行方をすぐに探って参ります」


「お、恐れながら連れてった者の名前はわかります」


女将は目を合わせられずに頭を地面につけたまま答えた。

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