第71話相談

「なぁに?」


いやに真面目な顔で見つめられて、王蘭は紅花様に優しく笑いかけた。


すると紅花様は王蘭の笑顔にホッとしたのか言葉をつむぎ出す。


「その、実は…王蘭様にご相談がありまして」


「相談?私で聞けることなら言って」


「ありがとうございます。王蘭様だから聞いて欲しいのです。実は、女官達が連れて来れる時に陛下が部屋まで来てくれたのです」


王蘭は紅花の言葉に顔を綻ばせた。


紅花が陛下の事を気になると言っていたので尚更良かったと手を取るとぎゅっと握りしめる。


「良かったじゃない!」


「はい、陛下に思い切ってお茶を飲んでいってくださいとお誘いしたら部屋まで入ってくださったのです」


紅花様の嬉しそうな顔に王蘭も思わず嬉しくなる。


「うんうん、それで順調そうなのに相談って?」


何も険しい顔で相談する事など無さそうな雰囲気に王蘭は首を傾げた。


「はい…でもそれから一度もお顔を拝顔してないのです」


紅花の瞳がうるうると悲しみに染まる。


「え?」


王蘭は驚いた。


てっきり話から陛下は紅花様の事を気に入ったのだと思っていた。


「私、何か粗相をしてしまったのでしょうか…女官達はそんなことは無いと言ってくれますが不安で…」


「そうなの…」


王蘭は何とかしてあげたいと思ったが陛下に会った事もない自分には何も出来ないと思っていた。


「王蘭様なら顔も広いようですし何か聞いていないかと…」


紅花様の不安そうな顔に王蘭は何とかしてあげたいと思った。


「わ、わかったわ!私も知り合いは多くないんだけど少し心当たりがあるから聞いてみるわね」


「本当ですか?」


「ええ、任せておいて!」


王蘭はドンッと自分の胸を叩いた。


その後は少し元気になった紅花様と楽しく談笑してお茶とお菓子を美味しそうに食べて帰って行った。


見送りながら笑顔で手を振っていた王蘭だが…紅花様達が見えなくなると眉間に皺を寄せた。


さて、どうしようかな…


腕を組むと顎に手を当てて考えていた。


「王蘭様?何かありましたか?」


そんな様子に春さんと凛々が心配そうに顔を覗き込む。


「え?ええ大丈夫よ。それよりも今夜は春さん…わかってるわよね?」


王蘭はニコニコと春さんに愛想を振りまいた。


「なんでしょうか?」


春さんは何かあったかと思い出そうと頭をひねった。


「やだ春さんたら、私が今日をどれだけ待ち望んでたか」


「えーと…すみません、なんだったでしょうか?」


春さんはすまなそうに王蘭様に答えを聞いた。


「それはもちろん春さんのご飯よ!もう春さんがいない間食べたくて…あっもちろん凛々のご飯も美味しかったわよ」


王蘭は凛々にニコッと笑顔を向ける。


「ふふ、ありがとうございます。でも私も春さんのご飯食べたいです!お手伝いしますから」


期待のこもった笑顔を二人に向けられて悪い気はしない。


「わかりました、今夜は美味しい食事を用意します。凛々、言葉通り手伝ってくださいね」


「はい!」


「やった!」


王蘭はとりあえず問題事は明日の自分に任せて今夜は食事を楽しむ事にした。

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