第60話家事

「大丈夫ですか!」


南明は悲鳴が聞こえた部屋に向かうとそこには泣きそうな顔でいる若い女官と王蘭の姿があった。


「あら、南明様おはようございます」


「え?」


王蘭様からのんびりとした挨拶をされて南明は肩の力が抜けた。


「な、何をしていたのですか?先程悲鳴が聞こえたような・・・・・・」


「ああ、それは・・・・・・」


王蘭が説明しようと持っていた物を振り上げる。


「や、やめてくださいー!王蘭様離してー」


するとそばの女官が泣きそうな悲鳴をあげた。


先程の悲鳴もこの女官のようだった。


女官の声に王蘭はえっ?と女官の方を振り返ると・・・・・・


ガッチャーン!


王蘭の持っていたほうきの柄が、見事に飾ってあった壺に命中して床に落ちて派手に割れた。


「あっ・・・・・・また割っちゃった」


王蘭様が割れた壺をみてごめんねと軽く女官にウインクして謝る。


「コレで二個目・・・・・・王蘭様お願いですから大人しく座ってて下さい!」


女官はきっと目を見開いて王蘭を見つめるとほうきを奪った。


「そんな!凛々手伝うわよ。私の事は気にしないで」


「気にします!もう大丈夫ですからここから動かないで下さい!」


女官の凄い迫力に王蘭は渋々椅子に腰掛けた。


「そんなー、凛々一人だと大変だから手伝おうと思ったのにー」


「大丈夫です!それよりも王蘭様は南明様とお話がありますよね!ね!」


女官は南明に縋るように詰め寄ってきた。


「なっ、一体何が・・・・・・」


見れば部屋は荒れてて色んな物が壊れていた。


「南明様!どうか王蘭様の相手をお願い致します。王蘭様仕事を手伝ってくれると張り切っていらっしゃるのですが、壺は壊すし窓は外すし、床は傷つけるし・・・・・・お願いです足止めして下さい!」


女官の必死な様子に南明は先程の悲鳴のわけがわかった。


「わかりました。王蘭様、話を聞きたいので部屋を移動致しましょう」


「えー、私今凛々の手伝いしてるのに・・・・・・」


「大丈夫ですから王蘭様はご自分のお仕事をなさってください!」


「そ、そう?」


凛々は必死にコクコクと頷くと王蘭はわかったと自分の部屋へと南明を案内した。




「あなたは一体何をしてるんですか・・・・・・」


南明はため息をついて王蘭を見つめる。


「何って、凛々の手伝いよ。今春さんが紅花様の女官の教育の方の手伝いに向かってて、凛々一人で掃除やらしないといけないから手伝ってあげようと・・・・・・」


「手伝うね」


南明は苦笑して部屋を見渡す。


どう見てもこの間来た時よりも部屋が崩壊していた。


「あなたの下にいたら女官としての腕が上がりそうです」


「あらそうかしら」


王蘭は褒められたと勘違いしたようで照れていた。


「褒めてませんが・・・・・・」


南明の囁く声は浮かれる王蘭には届かなかった。


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