第91話いざ視察

王蘭は静に王宮の中へと案内される。


しかしいつも使うような道ではなく、裏で使われる使用人用の通路のようだ。


裏を通り外に出ると馬車を用意されていた。


「誰が馬を引くんですか?」


仁と静を見ると静が手を上げる。


「外に出るまではお二人共、姿を隠していてくださいね」


「え?」


王蘭は聞いてないと二人を凝視する。


「出るまでだ」


王蘭は文官がそこまで身を隠す必要があるのかと首を傾げた。


「ほら、乗るぞ」


王蘭は仁に手を引かれて馬車に乗り込む、中は荷物が大量に積まれていた。


「これのどこに座るんですか!?」


「誰が座ると言った。このすき間に身を隠す」


荷物と荷物の間に少しだけすき間がある…


まさかここ?


王蘭は仁を凝視すると無言でこくりと頷き頷かれた。


「嫌なら行くのを止めるか?」


「行く!」


王蘭は先に馬車に乗り込むと、仁は笑いながら後に続いた。



「もう少し詰めてくれ」


「これで精一杯よ!」


二人でぎゅうぎゅうになりながら小さくなるが少しはみ出してしまう。


「あれ?お二人の感じからこのくらいの隙間で大丈夫そうだと思いましたが…王蘭様少し太りました?」


静の失礼な言葉に王蘭は顔を真っ赤にして抗議した!


「コレでも縄跳びで少し戻ったんですよ!」


「という事は太っていたと?」


「いや、そんなことはない。先程触ったが細かった」


仁がそれを否定する。


「仁様…それは…」


静が苦笑いして王蘭を見ると、王蘭は顔を真っ赤にして下を向いていた。


「あっ!いや、服を着せた時だぞ!わざと触った訳じゃない」


「わかってます…でも次はもう少し痩せておきますから」


「十分だ、むしろもう少し太れ」


仁と王蘭のやり取りに静は黙って身を引いた。


二人は放っておいて馬車の準備をする。


馬を準備すると荷台に声をかけた。


「それでは動きますからじっとしてて下さいね」


「はい」


「わかった」


後ろから小さな返事が返ってくる。


静は馬を動かした。




王宮を出る外門まで来ると静は通行証を門番に見せる。


「荷物はなんだ?」


「王宮への献上品を届けたところです」


門番は書類を確認すると荷台を見つめた。


「少し中を見させて貰う」


荷台の布に手をかける。


中で話に耳を傾けていた王蘭と仁は身を固くした。


「王蘭、もう少しこっちにこい」


耳元で囁かれて王蘭はビクッと肩がはねた。


仁は構わずに王蘭の体を抱き寄せて自分の体で隠すと上から布を纏った。


門番は荷台の布をめくると中をサッと見渡す。


中には木箱が数個と布がかけられていた。


何となく布に手をかけようと手を伸ばすと…


「よかったらこれを…王宮で頂いたお菓子です」


静がすかさずに門番にお菓子を差し出した。


伸ばした手を引っ込めて門番はお菓子を受け取る。


「なかなか市場では手に入らない高価な品ですよ」


静はそっと耳打ちすると門番はニコニコと笑う。


「いいのかなもらって」


「はい、私も頂いた物ですのでおすそ分けです」


「悪いな、さ!通っていいぞ」


門番は門の扉を開けた。

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