第79話勘違い

「王蘭様どうかされました?」


眉間に皺を寄せてると紅花が心配して顔を覗き込んでいた。


「いいえ、大丈夫よ。ちょっと紅花様の事を考えていたの…花が良く似合うなって…」


淡い桃色の花を撫でながら王蘭は心配させまいと笑って見せた。


「そんな事…」


紅花は嬉しそうにその花を見つめていた。


この痛みは違うわ…きっと仲のいい友人をとられるような気がして痛んだだけ…そう友情よ

それに紅花は陛下がいいんだもんね。


自分に言い聞かせるように納得すると紅花に向き合った。


「紅花様、今日はこの辺で帰りますね。また何かあれば報告に来ますから」


「もう帰られてしまうんですか?」


紅花は寂しそうに目をうるませると王蘭の服をおずおずとつまんだ。


陛下はこんな攻撃に耐えて帰ったのかしら?


可愛い仕草に




「いつでも会えますから。よかったら紅花様もまた遊びに来てください」


「いいんですか!?」


「もちろん」


紅花様は嬉しそうに今度きっと行くと約束した。



王蘭は自分の宮に戻ってくると部屋に戻ってベッドに横になる。


「王蘭様お疲れですか?」


そんな様子に凛々が心配そうに声をかけた。


「え、ええ。ちょっと疲れたから横になるわ。凛々も春さんと休んで」


「わかりました…何かあればすぐに声をかけてください」


「ありがとう」


凛々の優しさに王蘭は少し笑顔を見せる。


ベッドに横になり紅花とのやり取りを思い出す。


紅花は恋をしてるからなのか日に日に綺麗に可愛くなっている気がする。


私も恋をすればそうなるのかな…


そんな事を考えていると浮かんでくるのは仁の顔だった。


「違う!違う!彼とは友達」


思わず飛び起きて声をあげた。


だって…彼は宦官、それに向こうは友として接してくれているのにこんな思いを持つのはおかしい。


王蘭は自分に言い聞かせるように思いに蓋をした。



王蘭はガバッと起き上がると伸びをする。


「体を動かそう!」


運動しないからこんなうじうじとした気持ちになるんだ。


「凛々!」


「はい!王蘭様」


凛々は声に反応してすぐに部屋に駆けつけてくれる。


「ちょっと外で運動してくるわ。なんか縄が紐でもあるかしら?」


「な、縄ですか?」


凛々が顔をひくつかせる。


「別に誰か縛ったりする訳じゃ無いわよ、それを使って運動するの」


凛々はわけが分からないが王蘭様の言うことだからと縄を用意する。


王蘭はちょうどいい長さに切ると持ち手に布をまく。


そして、運動しやすい服に着替えて〝縄跳び〟を始めた。


「久しぶりだから最初は軽く…」


前飛びをすると、飛んでるうちに感覚を思いだす。


「二重跳びはできるかしら」


ピュン!と早く回すと難なく飛べた。


王蘭は汗をかきながら百回を目安に縄跳びをする。


百を飛び終えると後ろから手を叩く音がした。


振り返れば凛々が見ていてすごいと手を叩いている。


「王蘭様すごいです!よく飛べますね!」


「簡単よ、凛々も飛んでみる?」


「いいのですか?」


戸惑う凛々に王蘭は縄を手渡した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る