第65話陛下とお茶を…
「それにしても紅花様は愛されてますね。陛下がお茶を飲んだ方は紅花様が初めてなのではありませんか?」
女官の一人がお水を持ってきながら紅花様に話しかけた。
「そ、そうなのかしら…」
紅花は陛下と聞いて頬を赤らめる。
「紅花様、よろしかったですね。きっと陛下も紅花様を好ましく思っているのでしょう」
春が微笑んで女官から水を受け取ると紅花に渡した。
「そうかしら、陛下は優しいから皆にああなのではないかしら」
「いえ、私はまだここに来て浅いですが陛下が妃の誰かとお茶を飲んだとは聞いた事がありません!」
「私もです!あんなにお優しそうなのですね、それとも紅花様にだけなのかしら」
女官達は楽しそうに話をする。
「私に…だけ?」
「私達、紅花様にお仕えできて幸せです!陛下に愛されてる方なんて!」
「そ、そんなこと…」
紅花はいつもとは違う女官達の表情に戸惑いを見せる。
こんなにも親しく話して来てくれたことなど無かったのだ。
「皆様、紅花様はお仕えする方です。もう少し敬う気持ちをしっかりと持ちましょう」
春は少し親しげな様子に女官達に注意して気を引きしめさせる。
「陛下がいらっしゃって興奮するのはわかりますが、私達が一番に考えるのは紅花様の事ですよ」
「「「「はい!」」」」
女官達は春の言葉に姿勢を正した。
「春さん、大丈夫です。私はさっきみたいに親しげにしてくれるの嬉しいわ、王蘭様達のようで…」
紅花様はニコッと笑う。
「はぁ…紅花様まで王蘭様に毒されてるようですね」
春はそう言いながらもなんだか嬉しそうにしていた。
「では紅花様は少しここでゆっくりなさって下さい。私は皆さんに少し仕事の事を説明しておきます」
「はい、春さんよろしくお願いします」
紅花はニコニコと笑って、みんなが出ていくのをお見送っていた。
春は部屋を出ると女官達を引き連れて話の聞こえない厨房へと連れていくと皆の前に立ち女官達を見つめた。
「皆様、紅花様はお優しい方でああ言いましたがキチンと自分の立場をわきまえないといけません。これは皆様の為に言っているのです」
「は、はい…」
女官の一人が困惑しながら頷いた。
「あなた達がこの仕事についた経緯は聞いていますか?」
「はい、聞きました」
「それなら私の言う意味が分かりますね」
「すみませんでした。私達もっと気を引き締めろと言う事ですね」
女官達はシュンと肩を落として頭を下げた。
そんな女官達を見て春は微笑む。
「とはいえ、紅花様は皆様とも仲良くしたいと思っております。陛下や他の妃達の前では気をつけるのは当たり前ですが…私達だけの時は紅花様がお許しくださるなら親しくなさっても咎めません」
わぁ!
女官達の顔がパァと明るくなった。
「他の方には見つからないようにするのですよ」
「「「「「はい!」」」」」
春は女官達に仕事を言いつけてその様子を観察した。
あんな事があったあとの選別した女官だけあって皆若いがそれなりに仕事をこなしていた。
その中で一番年上の皆のまとめ役らしき女官を仮の女官長として仕事を教える。
「春さんが女官長ではないのですか?」
自分が仮とはいえ女官長になると言われて戸惑っていた。
「私は本来紅花様の女官ではありません。王蘭様の女官長なのです。あなた達が慣れたら帰りますよ」
「えー!」
聞き耳を立てていた女官達が悲鳴をあげた。
「そんな…どうにか春さんがこちらに居てもらう事はできないのですか?」
「紅花様にお願いしてみては?」
女官達が不安そうに提案する。
「そんなに心配しなくてもたまに様子を見に来ます。それに…私は王蘭様にお仕えする事を誇りに思っております。あの方以外に仕える気はありません」
「ではなぜここに居るんですか?」
「それは…王蘭様が望まれたからです」
女官達は春さんの笑顔に顔を見合わせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます