第51話友

愛琳は優麗の笑顔に顔を青くすると目を逸らす。


「ではこちらに…」


そして衛兵と宦官に連れられて行ってしまった。


「今日はこの辺で終わりにしておけ」


陛下が優麗に向かって声をかけると陛下は足早にその場を去っていった。

優麗は陛下の姿をじっと見つめて姿が見えなくなると女官達にすぐに撤去するよう指示を出した。


「ではまた皆様とお茶会をできる日を楽しみにしています」


さっさと後片付けを終えた女官達を引き連れて優麗は頭を下げてその場を後にした。


それに続き他の取り巻きの妃候補達もゾロゾロと帰っていく。


「私達も帰りましょっか」


なんか呆気ない幕引きに私はため息をつき、春さん達に声をかける。


「紅花様は…どうされますか?」


「わ、私は新たに女官を用意していただける様なので…それまで…」


どうやら宦官からしばらく待っているように言われてしまったらしい。


こんなところで待ってろと言われても困るだろう。


「なら、紅花様私の宮に来ない?春さんの美味しいスープでも飲んで待ってましょ」


捨てられた子犬のようにオロオロしてる紅花をどうもほっとけなかった。


「ね、春さんいいですよね」


春さんは仕方ないとため息をつくと宦官に話をつけてきてくれた。


宦官もそれなら助かると了承してくれたので、紅花様を連れて私達はやっと自分の城へと戻ってきた。



「はぁー!疲れたー!」


私は帰ってくるなりベッドにダイブした!

ここに来てからダラダラ生活なのにいきなりあんなに動いて疲れた。


「お、王蘭様?」


するとその様子に紅花様が大きな瞳をさらに開いてこちらを見ている。


「あっ、すみません。紅花様もどうぞ、気持ちいいですよー」


一人でいい思いをしてしまい謝ると少し端に避けてベッドをポンポンと叩いた。


「え?え?」


紅花様はどうしようかとオロオロとしている。


「ベッドに飛び込むのは王蘭様ぐらいです!紅花様に変な事を教えないで下さい!」


部屋に入ってきた春さんが私の行動に怒っていた。


「えー…凄い気持ちいいのに…それにここなら誰も見てないしー」


「この後宮、どこに目があるかわかりませんよ!」


するとカタッ!と天井で微かに物音がした。


「やだネズミかしら…」


私は天井を見上げる。


「ネズミはどこにでも入り込みますからね」


「ふーん…ネズミねぇ、春さん槍ってないかしら?」


「槍?何にお使いになるのですか?」


「ネズミ退治!」


私はニコッと笑った。


春さんは外の警護をしている衛兵から槍を一本借りてきてくれた。


「ふふ、一度やってみたかったのよねー」


私はそれを受け取り腕まくりをする。


「さっき音がしたのは…この辺よね!」


ふんっ!と勢いよく天井に向かって槍を突く。


ザンっ!


槍は天井を突き抜けて刃が刺さった。


「んーやっぱり手応えなんてないか…でも徹底的にやってみましょ…ホッ!ホッ!」


ザン!ザン!


私はその後も何度か天井を刺してみた、物音は聞こえずシーンとしている。


「何もいなかったみたいね」


笑って紅花様や春さん達を見ると…彼女達は驚きのあまり口を開けて固まっていた。

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