第108話抵抗
黄燕は王蘭を押さえつけると口を開けさせる。
抵抗するのを無理やりこじ開けて近くにあった布で猿ぐつわをして口を塞いだ。
王蘭はさらに力を咥えるが布を噛まされこれ以上は噛み切れそうになかった。
「馬鹿か!こんな事で死ぬやつがいるか?別に好きな男でもいるわけじゃねぇだろ?よく考えろ。地位も力も金も持ってる、俺以上の男に抱かれて嫌な女がいるか?」
王蘭の頭にはある
最初の印象は最悪だった…でも友人になって徐々に仲良くなると本当は良い奴だって知っていき気がつけば好きになっていた。
そんなしょうがなそうに笑う仁の顔が…
こんな事なら自分の気持ちを黙ってないで素直に伝えればよかった。
「全く、少しは大人しくしてろ」
黄燕は抵抗をやめたと思ったのか王蘭の服を掴むとゆっくりと腰の紐を引っ張った。
スルッと紐が解かれると服が肌ける。
王蘭の傷ひとつ無い綺麗な鎖骨がチラッと見えると黄燕はゆっくりと王蘭の顔に近づいた。
顔を背ける王蘭の頬めがけて舌を出して舐めようとする。
(王蘭らしくないな…)
諦めかけた王蘭に馬鹿にしたような仁の顔が浮かんできた。
王蘭はハッとすると背けた顔に反動をつけてそのまま黄燕に頭突きした!
「ぐはッ!」
王蘭の固い頭は黄燕の鼻に直撃すると、ポタポタと血が滴った。
「この女…」
黄燕は赤くなった鼻を押さえると青筋を立てて王蘭を睨みつけた。
諦めてたまるか!
仁ならきっと探しに来てくれる。
この男が権力者の息子だとしても、王宮に仕える仁達だってかなりの立場のはずだ…
抵抗してればきっと助けが…
王蘭は希望を捨てずに抵抗する事を選んだ。
バチンっ!
すると頭に血が登った黄燕は王蘭の頬を手の甲で叩いた。
大きな音が響き王蘭の頬は赤く腫れる。
ジンジンと頬が熱くなり熱を感じると痛みが押し寄せてきた。
泣きたくないのに痛みから涙が目に溜まる。
「そんなに死にたいのか…」
黄燕は低く唸るような声で王蘭を睨みつけるとその細い首に手をかけた。
片手で軽く握り潰せそうな首に力を込めると…
ドンドンドン!
「黄燕様!お父上がお呼びです。急いで広間にお越しください」
父の王伉の従者がわざわざ離れにまで呼びに来た。
黄燕はピタッと手を止めた。
「くそ…戻ってからゆっくりと後悔させてやる」
黄燕は王蘭を掴むと籠の中に再び放り込んだ。
「大人しくそこにいろ!」
鍵をかけると王蘭に怒鳴りつけて部屋を出て行った。
「なんだ!今いい所なのに…」
黄燕は不機嫌に外に出ると呼びに来た従者を怒鳴りつけた。
「黄燕様…その怪我はどうなさったのですか?」
従者は黄燕の鼻の傷を見つめて訝しげる。
「なんでもない!転んだだけだ、それよりも父上のところに行くんだろ!」
「はい…黄燕様あまり王伉様の手を煩わせる事などなさらないで下さい」
従者に冷やかに見つめられて黄燕は大きく舌打ちした。
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