第70話誤解

次の日、紅花は待ちきれずに早々と王蘭様の宮を訪れていた。


「ちょ、ちょっと待って!」


扉の前に立つと立ち止まり、不思議がる女官達を見つめる。


「どうなさいました?」


「お土産はこれで大丈夫かしら?それにこの姿、失礼じゃないわよね?」


自分の姿を見下ろして不安そうに聞く。


「はい、問題ありませんよ」


「大変綺麗です」


女官達は紅花様の様子に笑って答える。


「そう?ならお願い…」


紅花に言われて女官は扉を叩いた。



「あっ、紅花様達が来たのかしら?」


王蘭は門を叩く音に腰をあげた。


「王蘭様はこの屋敷の主ですから、ここでお待ちください。私と凛々でお迎えにあがりますから」


「はーい」


王蘭は頷くと、席に座り直した。


春さんと凛々が門に向かうと扉を開いた。


「ようこそいらっしゃいました、紅花様」


春は笑顔で紅花様達を出迎えた。


「昨日ぶりですね、王蘭様はお元気でしたか?」


案内されながら紅花様が王蘭様のことを聞いてくる。


「はい、それはもう元気です…」


春は苦笑しながら答えた。


王蘭様が待つ部屋の前につくと春は扉を開く。


まず紅花様が部屋に足を踏み入れると…


「いらっしゃい、久しぶりね。紅花様」


王蘭はにっこりと紅花様に笑いかける。


「王蘭様!」


紅花様は王蘭の元に小走りに駆け寄った。


王蘭は小柄な紅花様をしっかりと抱きとめると、苦笑した。


「元気そうね、その後は大丈夫かしら?」


「はい!王蘭様と春さんのおかげです。それに陛下の…」


紅花様はポッと頬を赤らめた。


「よかったわ、女官の皆さんもそんなに緊張しないでゆっくりしていってね」


「「「「は、はい!」」」」


女官達は声を裏返しながら返事をした。


「あの…王蘭様、少し二人でお話がしたいのですが…」


紅花はモジモジと恥ずかしそうに上目遣いで王蘭を見上げる。


「もちろんいいわよ、じゃあ春さんお茶を用意してくれる?その後は自分達でやるからみんなも好きに休んでて」


「はい、承りました」


春さんは頷き女官達を連れて部屋を出ていった。



女官達は部屋を出るなり春に詰め寄った。


「春様、春様!王蘭様はお優しい方なんですね」


「本当に、お綺麗で私達にと気をつかってくださるなんて…」


「紅花様が好いているのもわかります」


「そうです…ね」


春は興奮して王蘭様を褒める女官達に曖昧に笑って同意した。


「王蘭様は大変お優しいです…まぁ他にも色々と規格外ですが…」


春の言葉はぺちゃくちゃとおしゃべりをする女官達には聞こえていなかった。


春は王蘭様と紅花様にお茶とお菓子を用意するとごゆっくりと部屋を後にする。


春さんにお茶を用意してもらい二人っきりになると紅花様がじっと王蘭様を見つめた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る