第33話意外
「いえ…鈴麗様に幸せになって頂きたいからです」
私は否定すようにゆっくりと首を振る。
「幸せだと?」
「ええ、彼女はこの後宮では幸せになれないのです…ねぇ雲垓様?」
ニコッと彼に笑いかけた。
「あっ…いえ…その…」
雲垓様はきまり悪そうに南明様と仁様をチラチラと見つめる。
「どういう事だ?はっきりと言え」
「では言う代わりにこの事はここだけの話に留めて下さいね!」
「わかった」
仁様は即座に了承するが南明様は渋い顔で仁様を見つめている。
私は南明様の気が変わらないうに話を続けた。
「鈴麗様の本当に好きな方はこの雲垓様なのです…ですから鈴麗様はこんな後宮からさっさと出ていって外で本当に好きな方と結ばれて欲しいのです」
「なんであなたがそこまでする」
仁様は納得いかないのか嫌に絡んでくる。
「はぁ?友達の恋を応援するのは当然でしょ!それに楽しいし!」
人の恋バナ!
「楽しい…ここでは恋は出来ないと?」
「まぁ後宮じゃ相手は皇帝一人でしょ?しかも全然姿見せないし、私まだ一回も拝顔した事無いもの」
「あっ…」
雲垓様が何か言おうとするが口を慌てて閉じた。
「鈴麗様は皇帝陛下に興味無いし、それに好きな人がいて両思いなら結ばれるべきだわ」
「両思い…雲垓そうなのか?」
「は、はい…」
雲垓様はきまり悪そうに頷く。
ここまでバラしては秘密にも出来まい!
「確か雲垓は鈴麗と同じ州の生まれだったな」
仁様が思い出したように頷く。
「幼なじみで将来を約束し合った仲なのですよ!」
「王蘭様!」
雲垓様の顔が赤く染る。
ここまで来たらこの人達を味方につける方がいいからどんどんバラしていく。
「何故言わなかった…」
仁様が雲垓様に問いかける。
「彼女が後宮に入ったのは本当にこの前の書類で知りました…鈴麗の父が私に知らせないようにしていたのでしょう。それに後宮に入ったのなら鈴麗は陛下の事をお慕いしているのかもと思い…なら自分の気持ちは黙っていようと…」
「なぜ気が変わった?」
「それが王蘭様から雲垓に伝えたかったことなのでしょう?」
「そうですね!鈴麗様の思いをどうしても雲垓様にお伝えしたかった…もし雲垓様に気持ちがないのなら伝える事が出来なかったと鈴麗様には諦めてもらい次の恋に頑張ってもらおうと思いましたが…両思いとなればする事はひとつ!応援するだけでしょ!」
「王蘭様の気持ちはわかりましたが…後宮の后妃候補をそう簡単に違う男と婚約させるなど…」
南明様が難色を示した。
「そこで私から第二の交換条件です。今までの私の言動や行動…言葉…なんかおかしくありません?」
「はい、怪しさ満点です」
「ふふ、その秘密をお教えします…と言うのはどうでしょうか?」
「いいだろう!」
南明様に言ったつもりが仁様が真っ先に答えた。
「仁様!」
南明様が止めようとすると
「私がどうにかしよう、だからなぜこんな言葉や折り紙と言うものを知っているのか包み隠さず話せ!」
「いいですけど…鈴麗様を本当に後宮から出せるんですか?」
私は疑いながら仁様を見つめる。
南明様は陛下となんかしら関わっているような文官に見えるが仁様は…
すると私が疑っているのがわかったのか仁様が口を開いた。
「皇帝陛下の側近をしている。なので陛下に助言をする立場にあるから上手く誘導してみせる…そんな人の事を好きな女など後宮にいても意味ないしな…」
なんか最後の言葉は納得行かないが…この人皇帝陛下の側近なのか…
仁様をジロジロと見つめる。
見目がかなりいいから側に置いてるのかも…陛下のそばでここにもホイホイ来れる立場なら宦官だろうし…
こんなにモテそうなのに無いとは少し可哀想になる。
「そうですか…ではよろしくお願い致します」
私は少し慈悲の気持ちが芽生えて優しく声をかけて仁様達に頭を下げた。
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