第374話 陞爵

王妃が開催した晩餐会からしばらく経ち、クレハは王城へと招待されていた。


「クレハ、今回は本当に助かったわ。あなたがいてくれたからこそ、私のイメージが払拭されたわ。本当にありがとう!」


「いえ、私も今回の件で商品の良い宣伝になりましたから。ところで、今日は一体どんなご用件ですか?また、何か困りごとですか?」


クレハはこの前の一件は自身の商売にもつなげることができ、非常に満足しているが、さらに問題が発生したのかと尋ねるも、彼女の要件とは予想外のものだった。


「いえ、困りごとではないわ。実はね、今回の一件を陛下に話したらとても感謝していてね。あっ、もちろん、私もとっても感謝しているわよ。


それでね、男爵になって以来、クレハにはとってもお世話になってきたから、今回の件と今までの件を考慮して陞爵が決定したわ。


当然ね、私が言うのもなんだけど、王妃の信用が低下することは国のイメージに直結するもの。それを回復させるっていうのは、すごい成果よ!」


「えっ、それって・・・。」


王妃の発言にクレハが困惑していると彼女はクスッと笑みを浮かべながら話を進める。


「そう、クレハが良ければだけど、男爵であるあなたは子爵に陞爵よ。今まで沢山お世話になって来たけど、お礼をするのが遅くなってごめんなさいね。」


「い、いえ、王妃様にはいつもお世話になっていますから。それよりも、私が子爵ですか・・・。なんだか、想像できないです。」


「何言っているの、あなたはそれだけのことを今まででしてきたのよ。親が貴族だからって、自分の立場に胡坐をかいて、何の成果も出さない貴族よりも全然すごいわ。」


クレハが自分の与えられる立場に少しだけ驚いていると王妃は当たり前のことだと彼女に語り始める。王妃からすれば世襲制である貴族社会において、自分で成果を上げ、陞爵される人材というのは非常に貴重な存在なのだ。


だからこそ、王妃にとって、クレハは他のどんな貴族達も優れた存在であると断言できるのだ。


「あ、ありがとうございます。それにしても、私が子爵ですか・・・。帰って、ルークに伝えることができましたね。」


「そうね、帰って盛大にお祝いしないとね。あぁ、そう言えば話は変わると思うのだけれど、今回の一件の原因である、ホルイン家。彼らは爵位を剥奪になったのは知っているかしら?」


「えっ、そうなんですか。それって、やっぱり、先日の一件ですか?」


クレハはホルイン伯爵が王妃に行った事のせいで爵位を剥奪になったのかと、若干、王妃に畏怖の感情を抱くがそうではない。


「いえ、何か誤解しているかもしれないけど、香水のせいではないわよ。実は、ホルイン伯爵の息子であるギュラーが学園を占拠したのよ。それで、今回はお金に困ったホルイン家が計画的に占拠を行ったということで結論付けられて、最終的には爵位剥奪となったのよ。」


最後まで問題を起こすギュラーに呆れ顔を見せるクレハであったが、それと共に学園でお世話になったリゼランや生徒たちに被害がないのかが心配であった。


「そうだったんですか、あの家の人間は最後まで問題を起こすんですね。そういえば、学園の生徒や教員は無事だったんですか?あそこには、お世話になった方もいますので、無事ならいいんですけど。」


「それなら大丈夫みたいよ、なんだかよく分からないけど、学園長が囮になって生徒たちを守ったみたいね。」


「囮ですか?」


囮、と言われ、全く状況が想像できないクレハであったが、王妃にもよく分からないようで二人して、その事実に困惑するのであった。


かくして、ビオミカ男爵もとい、ビオミカ子爵が誕生するのであった。

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