第270話 ようやく事実を知る
「実は今回のお話を話すうえで事前に調査を行った結果、興味深い話が浮上してきたのですよ。なんと、このハンバーグを販売していた店舗に強盗が入り、材料などが盗まれてしまうということがあったんです。」
ウィンズス国王の言葉にそのような事があったのかと周囲の貴族達から驚きの声が上がる。そんな彼らにわき目にも振らずチーリエ国王はなぜ、そのような話を今するのかと問い詰める。
「ウィンズス国王、それが一体なんだと言うのだ。強盗など関係ないではないか!」
「まぁまぁ、話は最後まで聞いてくださいよ。実はこのハンバーグ、生誕祭でも一度に食べて良い量というのをきつく決められていたんです。皆様もそのことに関しては記憶にあるのではないでしょうか。」
ウィンズス国王が周囲の貴族たちにそのように話しかけると全員が記憶にあると言ったようにうなずいている。
「これにはちゃんとした理由があるのです。このハンバーグに含まれているとある材料なのですが、少量では全く人体に問題はないが大量に摂取すると幻覚作用など危険な症状を発症する可能性があり、最悪の場合死んでしまう可能性があるのです。
もっとも、生誕祭の際には大量に摂取すると死んでしまうかもしれないと言われ渡されたはずなので皆様も理由は知らなくても食べすぎは危険であるということは知っていることでしょう。」
「それならばやはり息子はコーカリアス王国に殺されたということで間違いないではないか!今の話を聞けば息子はハンバーグの食べ過ぎで死んだということになる。
聞いているぞ、そのハンバーグは生誕祭の記念の商品として今回初めて開発されたものだと。つまりはハンバーグを生み出すことが出来たコーカリアス王国以外犯人はいないではないか!」
ウィンズス国王の話を聞き、息子を殺した犯人はコーカリアス王国以外考えられないとチーリエ国王はさらにヒートアップする。しかしながら、ここでウィンズス国王はチーリエ国王が知らされていない事実を話し始めるのだ。
「それはおかしいですな、チーリエ国王のポポルコ王子とプアア王妃は城から追い出されているのですよ。それなのに食べすぎとはいったいどういうことなのでしょうか?」
「は、はっ?何のことだ、一体何を言っている?」
チーリエ国王は全く予想外のことを耳にし、先ほどヒートアップしていたことが嘘のように困惑してしまっている。
「おや、奥様から聞いていないのですか?あぁ、確かにあのような行いをすれば真実を話すこともないでしょうね。私の妻があのような行動をとれば即刻謝罪に行かせるくらい国の気品を落とすような醜い行動ですから。」
あの日のプアア王妃たちの行動を思い出すようにウィンズス国王が話していると周囲の貴族達も全くだと言うように彼の話にうなずきながらチーリエ国王を非難する目を向けていた。流石にそんな彼らの表情を見れば何かを見逃していると感じたチーリエ国王は彼に詳細を尋ねる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、本当に一体何のことを言っているんだ。妻が一体何をしたと言うんだ。」
「ですから、あなたの奥方とご子息は生誕祭が行われている会場でハンバーグはこれ以上食べれば危険だと言うメイドの忠告も聞こうともせず、さっさとお代わりをよこせと大暴れしていたのですよ。
そのうえ、その行動を見かねたナタリー王妃様が丁寧に止めに入ってもポポルコ王子は妾になれだの年増には興味ないだの信じられない発言をして、もはや驚きを通り越して呆れました。
むしろそこまでの行いをして城から追い出すだけの対応をした王妃様の懐の深さに感謝したほうが良いくらいですよ。」
「・・・。」
ウィンズス国王から聞かされたプアア王妃たちのあまりの行いにチーリエ国王は完全に固まってしまっていた。彼はようやく自分が知らされていない事実を初めて耳にしたのであった。
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