第221話 タルフ伯爵との取引

「それで、よろしければその醤油というものに関して聞かせていただけないでしょうか?」


タルフ伯爵は先ほどルークがコーヒーと誤解していた醤油というものが気になっていたようだ。彼はルークと反対にこのような黒い液体はコーヒーしか知らないため、そのような別の存在があるのが信じられなかった。


「もちろんです!その醤油は僕とオーナーの二人で開発した商品でどんな食べ物にもあう万能な調味料なんですよ。いろんな料理のバリエーションが広がってとっても人気な商品です!」


ルークは先ほどまではコーヒーを飲んだせいでひどい顔をしていたが醤油のことをタルフ伯爵から聞かれ、自信満々に説明を始めたのだった。


「ほう、それは面白そうな商品ですね。私は料理と言ったものには疎いのですが、このコーヒーのような真っ黒なものが調味料というのは大変興味深いですね。その醤油というのはこちらにも持ってこられているのですか?」


タルフ伯爵は醤油というものがあるのであればぜひ、味わってみたいと考え、クレハ達に尋ねるも今回の旅の目的は新しいものを発見して持って帰ることなのだ。


そのため、出来るだけ荷物は少なくしていたので醤油をそこまで持ってきているわけがなかった。せいぜいあったとしても船での食事に使うもの程度だろう。


「タルフ伯爵、申し訳ございません。今回はこちらで商品を捜すことが旅の目的でしたので私共が販売している商品は何も持ってこなかったんですよ。」


「そうか、確かにそう言う話であったな。それは非常に惜しいが仕方がないだろう。そうだ、実は私が国王陛下から任されている領地ではコーヒー豆を作らせているのだ。私はコーヒーには本当に目が無くてね。


それで、いつしか自分のこだわりぬいたコーヒー豆を作りたいと思って栽培に成功したのだが、そのコーヒー豆とその醤油というものの取引を行わないか?先ほどのクレハ殿の様子であれば気に入ってくれていたようだし、私もその醤油というものを食してみたいんだ。


これは取引しない手はないだろう!なに、初回はお試しということで気に入らなければやめればいいのだ。どうだろ、私もその醤油を試したことがないからこれからも定期的に取引を行うことは約束できないが、見解を広めるためにもぜひ、実物が欲しいと思ってね。お願いできないだろうか?」


「それは良い考えです!私としても喜んで引き受けたい取引ですよ。ルークもあれだけ美味しそうに飲んでいましたからね。きっと、気に入っているはずですよ。ねっ、ルーク!」


コーヒーの味を久しぶりに思い出したクレハはどうにかしてこれを手に入れることが出来ないのかと考えていた。コーヒーとは一度好きになってしまえばそれなしでは生きていくことが出来ない悪魔的な飲み物なのだ。


そんな飲み物が手に入ることに喜ぶとともに一瞬だけ嫌そうな顔をしたルークに対して再びいたずら心が沸いたのか、めいいっぱいの笑顔でルークに同意を求めるのであった。


「も、もちろんですよ。あれだけ美味しいコーヒー何ですから、たくさんいただきたいですよね。もちろん、僕も賛成ですよ。はっ、ははっ。・・・はぁ。」


「そうか、それではこれからはよろしく頼むぞ!」


一度強がってしまったせいで自分の本音を言えずに再びクレハにいたずらされてしまうルークであった。こうして、クレハ達は香辛料に引き続き、コーヒーという新たな商品を手に入れることに成功したのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る