第49話 クレハが告げる追放の真相

クリフは宰相の執務室を慌ただしく出ていくとまずは自らの屋敷へと帰る。王都であったことを執事に話すと彼はすぐにピトリスの街へ向かうべきだとクリフに進言する。クリフはその進言を聞き入れ、執事と共にピトリスの街へ向かう。




クレハはいつものように商品を売り切り、ルークと共に店の片付けを行っていた。そこに、一台の馬車が店の前に止まる。クレハはその馬車に何やら見覚えがあった。クレハは作業を止め、その馬車を見つめる。そんなクレハの行動を不思議に思ったのか、ルークはクレハにどうしたのかと尋ねる。


「オーナー、どうかしましたか?あの馬車が何か?」


ルークに声を掛けられクレハは作業を進めようとするが馬車から出てきた人物にクレハは目をしかめる。馬車から出てきたのはクレハの父、クリフ・シルドラとその執事であった。クリフはクレハを見つけると、薄気味悪い笑みを浮かべクレハに近づく。


「クレハ、久しいな。元気でやっていたか?それよりも、コーカリアス王国の王妃と知った中であるのなら父である私に言ってくれればよいではないか。驚いたぞ」


クリフの言葉にルークは目の前にいる人物がクレハの父であると知り、自分がお世話になっているクレハの父に挨拶をしないのは失礼だと考え、挨拶をする。


「オーナーの御父上でしたか、僕はオーナーにお世話になっているルークと申します。よろしくお願いいたします」


ルークはクリフに挨拶をするが、クレハにその必要はないと止められる。


「ルーク、その男は父などではありませんので挨拶などしてやる必要はありません」


クレハの言葉に、ルークはなぜそのようなことを言うのか分からない。


「オーナー、でもこの方はオーナーの父とおっしゃられていますよ?」


「その男はライスオット帝国の伯爵家の当主で、私のことを人間とも思わないような扱いをずっとしてきた挙句、私を追放してどこかで野垂れ死んでしまえばいいと思うような男よ。どうせ今回だって、私が王妃様にお目をかけて頂いているとでも聞いて、のこのことやってきたのでしょう。本当に、プライドというものはないのかしら」


その言葉を聞き、ルークはクリフのことをにらみつける。


「オーナー、そんなことがあったんですか。あなたはオーナーの父親なんでしょう!どうして、そんなことができるんですか!」


ルークは先ほどの態度と一転してクリフをにらみつける。また、クレハやルークの言葉を聞き、貴族を敬わない彼らに、クリフと共にやってきた執事が声を荒らげる。


「あなた達、このお方はライスオット帝国の伯爵ですぞ!ぶれいだと思わないのですか!」


しかし、それに待ったをかけたのは、ほかでもないクリフだったのだ。


「まぁ、待て。クレハ、私が悪かったから家へ戻ってきてはくれないか?きっとマーラやサンドラもお前がいないと寂しがっているぞ」


「なんと寛大なお心でしょう。クレハさん、伯爵がここまで言っているのです。もちろん、伯爵家にお戻りになられますよね」


執事はクレハが戻ることが当たり前のようにクレハに話しかける。しかし、それに怒ったのはルークだった。


「あなた達、自分が何を言っているのか分かっているのですか?オーナーを追い出しておきながら都合が悪くなるとまた戻ってこいなどと、そんなの通用するわけないですよ」


「ルークもういいですよ。もともと自分から追放されるように仕向けたんですよ。家の者は私が貴族家を追放された愚かな女と思っているかもしれませんが、本当は私の手のひらで踊っていたんですよ。」


クレハは既に、クリフとのやり取りは無意味だと悟り、真相を告げる。クレハがルークにそう告げると、先ほどまで温和な表情をしていたクリフの顔は何を言っているのか分からないという顔をしていた。


「な、何を言っているんだ。自分から追放されただと?なぜそんな意味のないことをするんだ!」


「まだ分からないんですか?どうして追放されてしばらくしか経っていない私が商会なんて経営できたんだと思います?商会を成功させるだけの知識をたくさん持っているからです。それをあなたのために使うなんて死んでも嫌だからですわ」


クレハの衝撃の事実にクリフは声を荒らげる。


「なぜそれを貴様は家にいるときに言わなかった!それを貴様が言っていれば私は今頃、さらなる財を築けたというのに!」


「あなたが少しでも私にやさしければそうしていたかもしれませんね。でも、もう遅いですわ!あなたは選択を間違えたんです。さっさと自分の領地に帰るんですわね。あなたみたいな愚か者に売る商品はありませんわ」


クレハがクリフに溜まっていた気持ちをすべてぶつけるとクリフは大声で叫びだす。


「ふざけるな!ふざけるな!ふざけるな!私がお前などの手のひらで踊っていただと、伯爵たるこの私が、ふざけるな!お前が生み出した商品の権利はすべて私のものだ。お前が稼いだ金はすべて当主である私のものだ!そうだ、シルドラ家が稼いだものは当主である私が管理すべきだ!」


クリフの言い分にクレハはあきれ、自身は既に家を出た身だと告げる。


「私は既にシルドラ家を追放された身ですよね?それなのに何故、あなたに売り上げを上げなくてはならないのですか?それでは筋が通りませんわよ」


「うるさい!お前は私の言うことを聞いてさっさと金を渡せばいいんだ!ここにある店もすべて私のものだ!よこせ!」


クリフはクレハに襲い掛かる。それを見たルークはクレハに危害が加わらないようにクレハの前に立つ。その時、第三者の叫び声が放たれる。


「貴様ら何をしている!直ちに投降しろ!」

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