第354話 軽蔑の目
「えっ、学園長が変態って、言わなかった?」
「えぇ、私にもそう聞こえたわ・・・。それに、あの先生たちの反応。嘘でもなさそうだし・・・。」
ギュラーの突然の暴露により、クラスがざわざわとし始める。流石に、クラスメイト達もそんなことはありえない、ギュラーのいつもの悪い癖だと考えたくもなるがクレハ達の反応を見れば、それも嘘だとは考えにくい。次第に、クラスメイト達は彼の言い分を信じざるを得なかったのである。
しかしながら、クレハにとって、それはあまり関係がないことだった。彼女が興味があるのはギュラーが話そうとした香水の件である。
「まぁ、学園長の件は置いておいて、香水の件とは何ですか?」
先ほどの自分の発言で学園長の秘密をうっかりばらしてしまい、動揺していたギュラーであったがクレハの言葉に本来の目的を思い出す。
「そうだ、香水の件だよ!お前、どういうつもりだ、香水なんて売り出しやがって!お前のせいでうちは大赤字だ!」
「あぁ、そのことですか。そんなことは知りませんよ、私は売りたいと思ったものを売っているだけですから。そんなことを言われても・・・。」
クレハが一旦、とぼけてみるも彼にとっては全く効果がないようだ。
「何とぼけたことを言っているんだ、教師のくせに生徒の未来を潰すようなことをしても良いと思っているのかよ!お前のせいで、この学園に通い続けることができるかも分からない状況なんだぞ。」
「はて?私は言ったはずですよね、最終警告だと・・・。その言葉を真摯に受け止めずに大人の喧嘩を続けたのはあなた達です。生徒レベルの嫌がらせ程度であれば私もここまではしていませんでしたが、伯爵からの宣戦布告まで受けたんですから、もうわかりますよね。
あなたは伯爵家のエリート君なんですから、これ以上の説明は不要ですよね。それに、もともと、私はあなたのような人間に対しては何をしても学園長が全責任を取ってくれるという約束の元、教員になったんです。」
客観的に見れば今回の件は完全にギュラー達に非がある。しかしながら、クレハの言い分を聞いたにもかかわらず、ギュラーの返答は自分勝手なものだった。
「な、なんだよ、なんだよそれ!聞いてねぇぞ、そんなの無効だ、無効!今すぐ香水を売るのを止めろ、やめないとタダじゃすまないぞ!」
「ほう、タダじゃすまないとは一体どうするつもりですか?」
「そんなの、決まっているだろ。伯爵家の伝手を使ってお前が香水を売っている店を根こそぎ潰してやるんだよ。既に親父が準備済みでいつでも実行できるんだぞ!」
ギュラーの脅しともいえる発言であったが、頭に血が上ってしまい、彼はここがどこであるかを忘れてしまっていたようだ。
「ちょ、今の聞いた?クレハ先生の店を潰すだなんて、もともと、性格は最悪だと思っていたけど救いようがないわね。」
「ほんと、最悪だわ。しかも、クレハ先生のお店が無くなったら、この香水もなくなっちゃうんでしょ。自分が悪いくせに、商品のライバルが出てきたからって力で脅すなんて商人の風上にも置けないわね。」
そう、ここは学園の教室であり、彼らは将来、商人を志す卵なのである。そんな彼らにとってギュラーの脅しは最もやってはいけないことだったのだ。
この瞬間、ギュラー本人もクラスメイト達が自身に軽蔑したような目を向けるのを感じとったのであった。
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