第355話 個性の一つ
「なんだよ、お前たち、その目は何だ!なんか文句あるのか!」
クラスメイトの普段とは異なる視線についにギュラーは耐えきれなくなったのか、彼らにも怒号を上げる。
「だいたい、こいつが男爵のくせして俺に歯向かうから悪いんだろうが!そいつの店を潰して何が悪い!」
「ぷぷっ、今つぶれそうなのは、そちらのお店ですけどね。」
いい加減、自分の現状をなにも把握せず、叫び続けるギュラーに対して何だか相手にするのが面倒くさくなってきたクレハは急に彼を煽り始める。
「おい、ふざけんなよ!誰のせいだと思っているんだ!」
ギュラーは煽り耐性がないのか、クレハにバカにされたというだけで簡単に怒りを露にするが、クラスメイト達には好意的に受け取られなかったようだ。
「ダサいわよね、自分がつぶされそうなのに威張るだけって。結局、ああいうのって大したことがないのよね。」
「ほんと、ああいう奴に限って自分の立場を分かっていないのよね。あんな発言を聞いて、ホルイン家の香水を買おうと思わないもの。自分の発言で自分の首を絞めていると思わなかったのかな?」
彼は既にクラスメイト達からは軽蔑すべき存在と認識されており、もはや何を言っても彼の味方はいなかったのだ。
そんな時だ、先ほどから、このクラスが騒がしいと、とある人間が駆けつけてきたのは・・・。
「おや、クレハ様?今は授業の時間では?この空気は一体?」
「あっ、変態学園長。」
「グフッ・・・。」
学園長は教室に入るや否や、クレハに声を掛けるも、ギュラーの発言を覚えていたクラスメイトの発言により、撃沈されてしまう。
「な、なな、なんのことでしょうか?誰かと誤解されているようですが、私は変態などではないですよ。」
「えっ、でも、ギュラー君も先ほど学園長のことを変態といっていましたし、クレハ先生も否定せずに当たり前って顔をしていましたよ。」
「ちょっと!クレハ様、どうしてそこは否定してくれないんですか!」
「いや、だって、教師として嘘をつくわけにはいかないですし。それに、別に私は変態も個性の一つだと思いますよ、良いじゃないですか、自分に正直になって下さいよ。」
もはや、隠す気もなくなったクレハは学園長に温かい目を向けながら彼女を説得するように易しい声を掛けるのであった。
「そうじゃないんですよ、私にも色々立場というものが、ふえ~ん。もう終わりです、私は生徒たちに蔑んだ目で見られることになるんです~。」
「あぁ、それは大丈夫ですよ。今、ここに絶賛、蔑んだ目で見られているギュラー君がいますから。彼ほどではありませんよ。」
そんなクレハの発言に現状を把握できていない学園長はキョトンと泣きながら首を傾げるのだった。
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