第290話 事態の好転

「ということで私が行っている薬に関する規制は正当なものです。今は何とか領内での蔓延はま逃れていますが事態が急変することもあるんです。


その様な状況に備えて私は領内にいる必要があるんですからそろそろ領地に返してください!もうここにきて三日じゃないですか、いつまでここに拘束するつもりです、ここまで協力的にしているのにどうしてこんなに時間がかかっているんですか!」


クレハは現在、王都にある審問院にて足止めを受けていた。調査に協力的であればすぐに帰れるものだと思っていたが既にここにきて三日も経っている。


流石のクレハであってもここまで長い拘束は予想しておらず、徐々に苛立ちが増してきていた。


「しかしですね、国ですら規制する必要がないと結論に至った薬に対して規制をかけるとはやりすぎとしか言いようがありませんな。


そもそも、あなたが言っている薬の副作用ですがその因果関係は関係がないと先日の会議で結論づけられました。


それならは規制を行う必要はないのですから早急に解いてはいかがですか?そうすれば我々もあなたを拘束する理由は無くなるのですからすぐにでも領地にお帰り頂けるのに。」


先日、王妃の呼びかけにて全能薬の危険性に関する会議が開かれたが結果的には最近の事件との関連性はなしという結論に至ってしまい審問院はクレハがどうしてここまで頑なに規制を行っているのか理解できないでいた。


まさか前世でそう言った薬を知っているというわけにもいかないためクレハは客観的な根拠を言えないでいた。だからこそ彼らはクレハに何かやましいことがあるのではないかと考え拘束も長引いてしまっていたのだ。


「何度も言わせないでください、国がどういう結論に至ったかなど関係ありません。私は私の領民を守るために薬の規制をしているのです。


私の領地でも薬を売りたいとか領民に使わせないなんて差別だなどという馬鹿どもの意見など聞く価値もありません。」


そう、審問院にはビオミカ男爵領にて薬の販売ができないのはおかしい、領民にもこの素晴らしい薬を味わう権利があると言ったふざけた訴えが上がっており、クレハの言い分が客観的ではない以上、そちらを優先するために何とか規制を止めて欲しいと話をしていたのだ。


しかし、そんなことをしてしまえば領内で一気に薬が蔓延することになると知っているクレハは決して首を縦に振ろうとはしなかった。


しかし、そんなクレハにもようやく運が向いてきたのか事態は好転することになる。それは国からの発表で”全能薬は人間としての人格を破壊してしまい破滅をもたらす薬である。よって、我が国においてその販売、所有、使用のすべてを禁ず。”と言ったものだった。

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