第11話 帝国からの商人

最近、帝国から貴族のお抱え商人という人たちが帝国でもクレハ商会の商品を売らせて欲しいと商会に訪れてくる。しかし、クレハはその誰にも商品を売ることはなかった。


彼女の元を訪れた商人の中には侯爵家や伯爵家からの使いの者もいたが帝国には商品を無理やり奪われたから絶対に売らないと頑なに言われ彼らにもどうすることもできなかった。


そんな中、今日も帝国からのお抱え商人が自身の世話になっている貴族のためにクレハ商会を訪れた。


「申し訳ありません、こちらのクレハ商会の会頭はいらっしゃいますか?」


「会頭は私ですが、どちら様でしょう?」


「申し遅れました、私ライスオット帝国の皇族のお抱え商人の1人であるマイルスといいます。実は最近、帝都で侯爵家の結婚パーティーがありまして、そこにご出席されていた第一皇女様が出席者の1人であるシルドラ伯爵家のマーラ夫人の髪がとてもサラサラしているのを見つけて、その理由をお聞きしたところこちらの商会から購入した商品を使っているとのことで、ぜひとも、その商品を使いたいと言われ私に調達をご依頼されたのですよ。ですので、とりあえずシャンプーやリンス、ボディーソープを200本ずつ頂けますかな、数は多いと思いますがこれはチャンスですよ。もし、皇族の方々に気に入られればクレハ商会も大商会の仲間入りを果たせると思いますよ」


お抱え商人のマイルスは自分の頼みなら断るはずがないと商品を用意する前提で話を進める。だが、彼に帰ってきた答えは彼の思ってもみない答えだった。


「申し訳ございませんが私の商会では帝国と取引することはございませんのでお引き取りください」


「なっ、あなた、何を言っているのかわかっているのですか?この話を断るということは帝国では今後一切、商売ができないということなのですよ。それを分かったうえでの申し出ですか?」


「ええ、十分理解していますわ。そもそも、商人から物を買わずに奪うだけの盗賊まがいなことをする帝国の貴族に商品を売るつもりなんてありませんわ」


「・・・・・、一体どういうことですか?」


マイルスはクレハのあまりの言いように言葉を発する事ができなかったがお抱え商人のプライドにかけて、せめて原因だけでも突き止めようとクレハの話を聞くのだった。


「どうも何も帝国のミトを治める領主のクリフ・シルドラ様からいきなり商品をもって屋敷に来いと言われ、伺ったところ、妻のマーラ様に今すぐに商品を置いて消えなさいと言われましたので商品の分のお金を請求したら、殺されたくなければ今すぐ消えなさいと言われたんですよ。これのどこが盗賊でないとおっしゃるのですか?だから、私、帝国には商品を卸さないと決めたのですよ。また商品を奪われたらたまりませんもの」


「そんなことが、しかし私は皇族のお抱え商人としての名誉にかけてお金をお支払いいたします。ですから、どうか商品を売っていただけないでしょうか?」


「その皇族のいる帝国が信用できないと言っているのですわ。どうぞ、お引き取りください」


「そうですか、今日のところは帰るとしましょう。ですが、もし帝国に商品をお売りしたくなったときは私を訪ねてください。悪いようには致しません」


そう告げると、マイルスはライスオット帝国に帰っていった。


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