第12話 シルドラ家の厄日
マイルスが帝国に帰ると早速、第一皇女の元へと報告に行く。頼まれた商品を手に入れることができなかったとしても皇女に報告に行かないなんてことはできないからだ。
マイルスは自身に課せられた職務を果たすことができず、これからのことを考えながら皇女に面会を求める。
「第一皇女殿下、マイルスでございます」
「あらマイルス、ようやく帰ってきたのね。ご苦労様です。それで、例の物は手に入りましたか?」
「申し訳ありません、商会の会頭がどうにも商品を売ろうとしなく、私の力不足です、この罰はいかようにも」
マイルスは己の失態につまらない言い訳をせず、ただ第一皇女に謝罪を申し入れる。彼女は求めていた商品をマイルスが購入できなかったと知ると顔をしかめるが、それもほんの一瞬で元の顔に戻る。彼女はマイルスとも長く付き合いがあり彼が力不足であれば何か問題があったとわかっているのだ。
「マイルス、あなたに罰を与えるなんてこと私がするはずないないですよ。それよりも、あなたほどのものが頼んだ商品を手に入れることができなかったなんて何か理由があるはずです。それを教えてはくれませんか?」
「感謝いたします。商品に関してですが、なんでも、いきなりシルドラ伯爵家に呼ばれ、商品を卸しに行ったらお金を払わず、商品を置いてすぐに消えなければ殺すと脅されたらしいです。そのため、帝国の貴族は代金も払わず商品を奪うと思われており、一切取引をしないとしているそうです」
「それは、本当のことなのですか?貴族家がそんな盗賊まがいのことをするなんてにわかには信じられませんが」
「確かに、殿下のおっしゃる通りですがシルドラ伯爵家は違います。私も殿下のお抱え商人に拝命いただく前にはシルドラ家にさんざん煮え湯を飲まされてきました。お抱え商人となった今では殿下のおかげもあり、そのようなことはなくなりましたが」
「そうでしたの、私のお抱え商人に手を出していたとはいい度胸ですね。それに、あの者たちのせいで例の物が買えなくなったとは。まったく、ええ、いい度胸ですね。そういえば最近、私の愚弟があの家のサンドラとかいう娘と婚約をしたらしいですが、最早あの家とは縁を切る必要がありますね」
翌朝、シルドラ家あてに第4皇子から婚約破棄の通達がもたらされた。それと共に、ライスオット帝国の貴族界で第4皇子とシルドラ伯爵家サンドラの婚約破棄の話が瞬く間に広がった。
シルドラ家にて
「いったいどうなっているのだ!サンドラ貴様一体何をしたのだ。婚約破棄などただ事ではないぞ。周りの貴族家の連中からは白い目で見られるわで、とんだ恥をかかされたぞ、くそっ」
「お父様、私何もしていません!昨日も王宮でお茶をしてきましたのよ」
「うるさい、それならば婚約破棄などされるわけないだろう。ほかに男でも作っているのを第4皇子に見られでも、したのではないだろうな」
「なっ、お父様そんなこと、あんまりですわ!」
「うるさい!お前は私が良いと言うまで外出を禁じる。部屋に戻っていろ」
シルドラ家では当主クリフが荒れに荒れ、それを治めるのに使用人たちは苦労するのであった。これがクレハの計画の始まりであるとも知らずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます