第238話 不穏な報告

「オーナー、ちょっといいですか?気になる報告があるんですが。」


クレハの元にルークが深刻な表情をしながらやってきたのは例のリーシア教の人間がやってきてからしばらくのことだった。


「どうかしたのですか?」


「実はですね、ピトリスの街で良くないうわさが広がっているとの報告を受けまして、その影響かお客さんの中には酷いことをしている人もいるようなんです。」


ルークから話された内容はピトリスの街でクレハ商会に関して良くないうわさが広がっているというものだった。ただの良くないうわさというだけであれば以前の様に誠心誠意、商売を続けていればいいだけだ。


しかしながら前回と異なる点は店で暴れるものが頻発しているということだった。どうやら何かと理由をつけて店で暴れているようでいくら捕まえても次から次へと暴れるものが現れると言うのだ。


「それで、従業員の方は無事なのですか?」


「はい、それはどうやら問題が無いようです。暴れるのは店の商品を壊したりしているだけで店員に危害を加えることはないようですね。なんでも、悪魔は立ち去れとか叫んでいるようです。」


今までは商品を壊すだけだったが、それが従業員に向けられる可能性も十分ある。商品が壊される程度であれば補充すれば済む話だが、従業員はそうはいかない。クレハは一刻も早くその問題を解決したいと考えていた。


「あ、悪魔ですか?いったいどういうことなんでしょう?ですがその様な人間が頻繁に現れるのであれば早急に対応しなければなりませんね。いつ店員にも手を出し始めるか分かりません。


ルーク、とにかくピトリスの街へと向かいましょう。向こうに行かなければ分からないこともありますし。それに、あそこにはノイマンさんもいます。彼ならば私たちが知らないことも何か知っているかもしれません。」


そう、ピトリスの街と言えばクレハ商会発祥の地と言ってもいいがノイマン商会のホームでもあるのだ。あの街で何か調べ物をするのであればノイマンに聞くのが一番だろうとクレハは考える。


「ノイマンさんですか、そう言えば最後にあったのはいつでしょう。最近はこちらでのお仕事が忙しくて全然顔を見せれていなかったですね。」


「そうですね、こんなことが無ければ観光と称してノイマンさんの元に遊びに行けたのですが・・・。とにかく、従業員たちが被害にあう前に現状を把握しましょう。」


クレハは何が起こっているのか調べに行くと言ったものの、ルークの報告にあった悪魔という言葉に非常に嫌な予感がしていた。悪魔なんて言葉を使う場合は大抵が憎い相手か宗教が絡んでいるからだ。


そんな嫌な予感が現実にならないことを願い、クレハ達はピトリスの街へと向かうのであった。

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