第239話 ピトリスの街にて

「さて、ようやく到着しましたね。とりあえず従業員に直接話を伺ってみましょうか。」


クレハ達はピトリスの街へと到着し、早速従業員に話を聞こうとクレハ商会の店の前に到着するとその瞬間、店から何かが割れる音と叫び声が聞こえてきた。


そんな急な事態にクレハとルークは思わず顔を見つめ、急いで店内へと走り出すのだった。


「この悪魔が!お前たちがこんなものを売りさばくから人間は堕落するのだ!この地から立ち去れ。」


「あなたは早く衛兵を呼んできてちょうだい!あなた、お客様に被害が及ばないように避難させて頂戴。」


クレハ達が店の中に飛び込むと店の中心で商品を投げつけている男と従業員に指示をだし、被害が及ばないようにしているものがいた。このままでは被害はさらに広まると考えたクレハは自らの護衛に連れてきた兵士に命じ暴れている男を捕まえるのだった。


「離せ、くそが!ふざけんな、てめえら何しやがる。」


男は兵士に押さえつけられたというのに未だに抵抗している。しかしながら先ほどの従業員が呼びに行った衛兵がすぐに駆け付けたため、男は詰所へと連れていかれるのだった。


「大丈夫ですか?」


「ク、クレハ様!どうしてこのような場所に。」


クレハは男が連れていかれるのを確認すると先ほどまで従業員たちに指示を出していたものに声をかける。クレハの記憶が正しければ彼女はここの店長を任せていたものだ。彼女もまさかクレハ本人がここに来るなど予想していなかったのかとても驚いている。


「何やら大変なことが起きていると聞き、駆けつけてきました。実際に見るまでは嘘であって欲しいという思いでしたがあれを見た後ではそんなことも言っていられませんね。とりあえず、詳しい話を聞かせてもらえますか?」


「はい、かしこまりました。あれは本当に最近起こり始めたことなんですが、ある時からお客様の中に突然店の商品を投げつけ、叫びだす方が現れたんです。


それが1人などであればただの不審者として処理できるのですがここ最近は毎日あのようなことが起こっています。しかも、悪い時では日に2回、ああいったことが起こるんです。


流石にあの状況ではお客様も来店を敬遠されるようで目に見えて来客されるお客様が減っているように見えます。」


「なるほど、そのような事が。ところで、暴れた人間はみんな悪魔だの何だの言っていましたか?」


クレハの発言に店長は少しだけ考えるそぶりを見せるとコクリと頷く。


「確かにそうですね、よくよく考えてみれば全員そうです。悪魔の従僕がと叫んでいた人もいました。そう言えば暴れた人は普段見ないお客様でしたね。一度でも来られた方は顔を覚えている自身があるのですが。」


店長は一度でも来店したお客様の顔は決して忘れない自信があったため、とても不思議そうにしていた。大抵の場合、商会で暴れる原因は買った商品が気に入らなかったということが多く、店で買い物をしていない人間が暴れることはないからだ。


「あっ、後はお客様から聞いたのですが、暴れた人たちはどの人もこの街では見たことが無い人だっておっしゃっていましたね。もしかしたらこの街に来たばかりの時にお店で暴れたのかもしれません。でも、そんなことはありえないですよね。どう考えても動機がありませんし。」


店長の話を聞き、クレハの嫌な考えはさらに確信を持つようになる。この国境近くの街に始めてくる人間が暴れている。つまり、それはお隣の帝国の人間が暴れている可能性が高いということだ。


帝国と言えば以前にクレハに訳の分からない提案を無理やり押し付けてきたカエルが信仰していた宗教が国教となっている国だ。今の状況ではあのカエルの言っていた神罰とやらを教団ぐるみで仕掛けてきているとしか思えない状況だったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る