第337話 商人たち、敵を知る

ドパスの元には相変わらず変わらない現状に嫌気をさした商人たちが彼の元へと集結していた。


「おい、いい加減にしろよ!こっちは限界だ、もう店を畳むしかないぞ。これもすべてお前の言うことを聞いたせいだ!賠償しろ!」


「そうだ、店のもん全部あいつらに買われてるくせにいつまで経っても潰れないじゃないか。これじゃあ、こっちが潰れるのも当たり前だ。お前、知らないのか、あの店の元締めはこの国の最大勢力を誇る商人だぞ!


俺たちはそんな奴を相手にしていたんだ、そんな商人に勝てるわけがないだろ!俺たちは元々勝てない戦いに挑んでいたんだよ。」


そんなとある商人の一言でこの場は一気に静けさに包まれることになる。彼らは自分たちが相手をしていた商人たちは個人で経営を行っている商人だったと考えていたのだ。しかしながら、すべての商人たちはクレハ商会の傘下であり、このような場所で商売を行っている彼らが太刀打ちできるはずもなかった。


なぜなら、本当に優れている商人であればドパスの話など聞かずにすぐにこの状況を把握し、今の商売から撤退するだろう。しかしながら現状においてもドパスのせいにし、自分で考えようとしない彼らの未来は決まったものであった。


「おい、そんなの聞いてないぞ!何でそんな奴らに喧嘩売っているんだよ、勝てるはずないだろ。」


「あんた、知らなかったとは言わせないよ。あんたが今回の計画を持ち掛けてきたんじゃないか。責任取りなさいよ!」


前提条件が変わってしまったことで商人たちはドパスを責め立てるが彼は全く知らんぷりをする。もっとも、リサーチ不足で本当に知らなかったわけだが。


「知らねぇよ、そんなの知るはずがないだろうが!最後にこの計画に乗ったのはお前らだろ。」


しかし、彼の言い方も悪かったのだろう。この状況で自分の責任とは発言せず、すべては自分の計画に乗ってきた商人たちの責任であると彼らを責め始めたのだ。


この言葉がきっかけだった、ただでさえ最近は赤字続きで自分たちの懐が寂しくなりストレスを抱えるようになった商人たちであったが先ほどの発言でその大半が爆発したのだ。


「お前が俺たちに変な計画を持ち掛けてきたんだろうが、それが俺たちのせいだと!ふざけるのも大概にしろや。」


そう言うと、一人の商人がドパスの顔に勢いよく拳を叩きつける。すると一瞬の鈍い音と共にその体はバランスを崩し、倒れ込んでしまう。そんな彼を見ていい気味だと思ったのか、周囲の商人たちは追い打ちをかけるように彼の体に蹴りを入れ続ける。


「お゛お゛ぃ、やめろ、やめ、うぐっ・・・。」




「けっ、もうくたばりやがったか、くたばるなら金の一つでも残して逝きやがれってんだ。」


「おい、こいつの商会から金になりそうなものはすべて分配してしまおうぜ。そうでもしないと割に遭わないぞ。」


「そうだな、その金で帝国で新しい商売でも始めるか。この国で商売していても儲けられる見込みはなしな。」


「そうね、そうしましょ。このゴミが見つかる前にさっさとこの国から出ていきましょうか。」


こうして、いつしか帝国の商人たちはコーカリアス王国から姿を消していくのであった。ちなみに、この日から数日後、瀕死の状態の商人が発見されるのだが、すでに彼の店からは何もかも消えさってしまっていまい、治療費すら払えないのであった。

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