第338話 推薦書

今回の件のリーダーと呼べるべき存在がタコ殴りに会い、帝国の商人たちが撤退してから数日後、クレハは王妃の呼び出しに応じ、城へとやって来た。


「クレハ、よくやってくれたわね!話はすべて聞いているわ、帝国の商人たちが撤退したそうじゃない。」


「ありがとうございます、今回は向こうが墓穴を掘ってくれたというのもありますが、うまくいって良かったです。」


「それで、いったいどんな方法をとったの?あの商人たちを全員撤退させるなんてただ事じゃないわよ!ねぇ、どんな方法をとったのか聞かせて頂戴!」


王妃が興味津々に今回のことの成り行きをクレハに尋ねるため、彼女も初めから説明を始めるのだった。




クレハが説明を終え、王妃がその手腕に感動していると彼女は何かを思い出したようにとある話を始める。


「そう言えば、今回の一件のお礼を上げないといけないわね。はい、これが国からの報酬よ。うまく使えばあなたにとってはかなり効果のあるものになるわね。」


そう言って王妃がクレハに渡したものは一枚の書類だった。


「推薦書?これは何ですか?」


「これは王族がその商人の実力を証明するものです。各国の王族がこれだと感じた商人にこの推薦書を送るのよ。これがあれば国がその実力を保証するものだから他国で商売する時には最高の信用を得ることができるの。


現在、コーカリアス王国の推薦書を所有しているのはあなたを除けばたった一人だけよ。うまく使って沢山稼いでね。」


「そんなすごいものを頂いても良いのですか?この国ほど大国が保証するのであればかなりの信用になるのではないですか?」


「いいのよ、あなたにはいつも助けてもらっているし、これくらいしてあげないと割に合わないわよ。別の大陸になってくると難しいかもしれないけど、少なくともこの大陸であればどこでも使えるはずよ。」


クレハ達がいる大陸では各国がこの推薦書に関する取り決めを行っており、コーカリアス王国ほどの大きな国の推薦書であればその効果は計り知れないものであった。クレハは気が付いていないかもしれないが小国であればこの書類を見せるだけでその国の国王がひれ伏し、靴をなめるほどのものなのだ。


「ありがとうございます、これは大切に使わせていただきます。」


「あぁ、そう言えばこれも忘れていたけどあなたに会いたいって人がいるのよ。」


「えっ、私に会いたい人ですか?」


「えぇ、何というか、悪い子じゃないんだけど、ちょっと変な子なんだけどね。悪い子じゃないのよ。少しだけでいいから話だけでも聞いてもらえないかしら。」


「はぁ、まぁ、会うだけであれば。別に問題ありません。」


こうして、クレハは王妃の微妙な反応に少しだけ嫌な予感がしたが話だけでも聞くためにその人間に会うのであった。

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