第334話 商売の基本

ここにはドパスの招集で集まった帝国の商人たちが彼に対し不満を垂れていた。


「それで、いったいどうするんだ?俺たちはあんたが手を組めば儲かるって言ったから言う通りにしたんだぞ。」


「今は状況が変わったんだ、そんなことを言ってないで打開する方法を考えればどうだ。」


案の定、この状況に陥る原因となったドパスに他の商人たちから非難が集中する。そんな時だった、彼らの中にとある提案をする者が現れたのは。


「ねぇ、それなら客を呼び戻せばいいんじゃないの?」


「はぁ、それができない状況だからみんなが困っているんじゃないか。そんな簡単に客が戻ればみんな苦労しないんだよ。」


商人の一人がとある提案を行ったがあまりの幼稚な考えにドパスはつい、悪態をついてしまう。しかしながら、それは彼女も同様だったのである。


「何ため息ついているの、あんたたち商人でしょ。商人なら普通に商売すればいいじゃない、商売の基本は他の店よりも安くよ。簡単じゃない、他の店に客が行くのならそれよりも安く商品を売ればいいだけじゃない。


売っている商品だって似たようなものだし、こっちが安く売って他の店に客を活かせないようにすればいつかは潰れるわよ。そうなれば後はこっちのものじゃない、今とおんなじ金額で商売をしてやればいいのよ。」


彼女の考えは簡単に言えば商品を安く売って他の商人たちの店に客を寄せ付けないということだった。一見単純な方法であるがこの考えに周囲の商人たちは予想外だったのか驚きを隠せないようだった。


「あぁ、確かにそう言われればそうだな。普通に商売をするならそれが一番だ。というか、いつもそうやっていたのに、どうしてそれを思いつかなかったのか。」


「えぇ、そうよ。商売の基本は間違いなくそれよ、みんな安いものを欲しがるんだから、客を呼び寄せるにはそれが一番ね。」


商人たちは彼女のアイデアを絶賛し、彼女をほめたたえたのであった。こうして商人たちは自分たちの店の商品の値段を下げることでクレハ商会に対抗しようとしたのであった。


しかしながら、彼らは商売において最も大切なことを忘れていたのだ。確かに商売の基本は安くていいものを提供することだろう。だが、それよりも大切なことは信用である。


少なくともその安さにひかれて彼らの店を訪れる住人たちはいるかもしれない。だが、大多数の住人は今まで彼らに足元を見られていたことを忘れるはずがないのだ。だからこそ、彼らは予想外の悪夢を見ることになるのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る