第15話 パンじゃないパン

最近、クレハ商会では新商品が発売されたという噂が街では持ちきりになっていた。クレハ商会ではほかの商会にはない斬新な商品が売り出されているとみんなが知っているため、次に発売する商品はどんな驚く商品なのかが気になり商会を訪れる者もいた。


また、一度その商品を買ったものはもう一度あの雲のようなパンを食べたいと思いクレハ商会に押し寄せるのであった。


「ねえ、あのパンじゃないパンを食べたかい、信じられないほどフワフワで食べた瞬間口の中で消えてしまうんだよ」


「ああ、あのクレハ商会のパンだろ。信じられるか?あんなに外はカリカリしてるのに食べた瞬間もっちりフワフワして。あれはパンじゃねーよ」


「確かに、あれはパンじゃないね。あれはまさに雲だよ。雲パンだよ」


「いいじゃねーか、雲パン。雲パン最高だ!」


雲パンの噂は瞬く間に街中をかけていき、様々な者たちに伝わっていく。



とあるパン屋の店長

ここは雲パンを開発したルークが勤めていたパン屋。彼を追い出したパン屋の店長はルークが自分の店をやめた後に徐々に売り上げが減ってきていると感じていた。彼は店の店員に原因を調べさせるとクレハ商会が今までではありえないおいしさのパンを売り出していることが分かった。それだけではなく、自身の店をやめたルークがクレハ商会で人気のパンを売り出していたため、自身の店のレシピを盗んでパンを作ったに違いないと考えていた。


「あの野郎、よくも俺の店の味を盗みやがったな。ふざけんな!あいつ、もともとクレハ商会に雇われて俺の店の味を盗むために来やがったな。絶対にただじゃ済ませねぇ」


クレハ商会の雲パンはコーカリアス王国のどの店のパンを盗んだとしても開発することはできないが、自分のレシピを疑わない店長はそのことに腹を立ていく。




とある王妃の専属メイド

ここはコーカリアス王国の王妃の部屋、王妃に仕えている専属メイド、サラはピトリスからもたらされた噂のせいで落ち着きがなくなっていた。


「ああ、どうしましょう。あの至高の調味料、マヨネーズを生み出したクレハ商会が新たな食べ物を売り出したなんて。どうして私はピトリスに住んでいないのでしょう。しかも、噂によれば今まで食べたことないくらいフワフワで、まるで雲のようだと言われているらしいではないですか。ああ、王都で売り出してくれないでしょうか?」


「サラ、落ち着きなさい。はしたないですよ」


「申し訳ありません王妃様、ですがどうしても我慢できません!」


「はぁ、仕方ないですね。そういえば、もうすぐ諸国会議がありましたね。そこでサラサラな髪を披露すればきっと周辺国の王妃や王女たちから注目されることでしょう。そうなれば我が国の威光を示すことができますね。そのためにはシャンプーやリンスなどの商品が必要ですね。サラ、あなたに命じます。その用品を販売しているクレハ商会の会頭を王城に招待しなさい。任せましたよ」


「王妃様!ありがとうございます!必ず連れてまいります」


王妃の計らいによりサラはピトリスに再び向かう。

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