第154話 役に立たないナタリー王妃
さて、テクネー王妃によるコーカリアス王国のブース見学もいよいよ最後の番となる。既にどのブースも何かと文句をつけられ、テクネー王妃にやり込められている。周りにはテクネー王妃の口撃によってダメージを負った者たちばかりで暗い雰囲気が流れ始めていたのだ。
ナタリー王妃に至っては初めの気概はどこへ行ったのかというくらい落ち込んでいた。先ほどまで、さんざんテクネー王妃にバカにされていたから無理もない。彼女のメンタルは既に限界を迎えようとしていた。
「さて、ここが最後クネ。まぁ、他のブースを見た感じでは結果は目に見えているクネ。別に周りの奴らのようになりたくなければそれで構わないクネ。あなたには罪はないクネ、悪いのはすべてこの王族クネ。」
そう言いながらクレハに向かい、テクネー王妃は辞退を進言してくる。ナタリー王妃に至ってはショックを受けすぎて当初の計画など忘れてしまっているようだ。
しかし、クレハだってタダで負けを認めるわけにはいかない。たとえ、今回の計画が王妃の為であっても今の発言は商人であるクレハに向けての挑戦ともいえる。そんなテクネー王妃の挑戦にクレハは真っ向から受けて立つのであった。
「いえ、その必要はありません。我々の商会はどのような方でも満足される商品を提供していますから。もちろん、その技術力も大陸一であると自負しております。」
先ほどまで、クレハと同じような文言をみな、発言していたが結果的には全く大したことがなかった。そんな彼らの発言にテクネー王妃はイライラしていたのだ。弱い犬が自分の身をわきまえないで強者に吠える、何よりもその行為がテクネー王妃の機嫌を損ねていた。
それはクレハに対しても同様だ。国全体としてオリクト王国にすら劣っているコーカリアス王国の一商会が大陸一を自称するなどあまりにもおこがましい、クレハに対するテクネー王妃の評価は既に下がり始めていた。
「一つ、忠告をしておいてあげるクネ。行き過ぎたビックマウスは身を滅ぼすクネ!弱者には弱者の身の振り方というものがあるクネ。これに懲りたら、次からはそのようなことは言わないほうが良いクネ。」
「ご忠告ありがとうございます。しかし、我々には必要ないことです。それに、何もしていないうちから相手のことを弱者などと決めつけてしまうことこそ、問題なのではないのですか?少なくとも、強者だの弱者だの言うのであれば確認を行う必要があると思いますが?」
テクネー王妃の忠告にクレハも強気に答えていく。ここで引いてしまうのはクレハ自身が許せなかった。そんなクレハを相手にして、なぜかテクネー王妃は嬉しそうに笑いだす。
「ふっ、言うクネ。そういう奴は嫌いじゃないクネ、しかし、それはあくまで強者のみクネ。弱者がそんな発言をしてもただのかませ犬クネ。」
そんなテクネー王妃に対してクレハもニヤリと笑みを浮かべ、ケーキをさしだすのであった。
「まずは食べてみてください。この大陸では我々の商会しか用意できないケーキというスイーツです。」
そんな攻防が繰り広げられている中、本来であれば主役であるはずのナタリー王妃は未だにショックから立ち直れておらず、蚊帳の外であった。
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