第247話 看板の追加
それはクレハ商会が休店し、しばらく経ってからだった。クレハ商会にて新たな看板が設置されたのだ。
[お客様各位へ
この度は長らく休店によってご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございません。しかしながら現在もリーシア教との和解は成立しておらず、放火をしておきながら賠償もなしに和解をしろと一方的に押しよってくる始末です。
私共といたしましてもお客様にご迷惑をおかけしたくないと考え、このような理不尽な言い分にも従おうと考えていましたがリーシア教に与えられた被害が大きいため、賠償なしでは今後の経営に影響をきたすと考え、現在も交渉中でございます。
お客様にはご迷惑をおかけしますがクレハ商会が再開できる日まで、どうか応援頂ければ嬉しく思います。]
こんな看板を見たピトリスの街の住人たちは隣国のリーシア教がどれだけヤバい宗教か話始め、クレハの宿を楽しみにしていた商人や貴族たちはリーシア教の本拠地がある方角を怒りの表情でにらみつけるのだった。
「どういうことですか!話が違いますよ、話が。あなたはあの時、許すと言ったではないですか!」
クレハ商会の前に新たな看板が立てられ、数日してからだった。あの日、クレハに許し合える心とやらを語ったマグナ大司教が訪ねてきたのだ。
彼はクレハを見るや否やすぐさま言い寄り、話が違うではないかと怒り出したのだ。おもてには完全には出していないが彼の心の中は怒りに満ち溢れていた。
なぜ、彼がここまで怒りに満ちているのか?それはクレハ商会の新たな看板を見たとある貴族が帝国に対して苦情を言いつけたことが原因だった。その貴族とは帝国にとって非常に重要な存在であり、彼はクレハの宿での宿泊を楽しみにしていた。
しかしながら、それがリーシア教のせいでなしになってしまったのだ。もちろん、リーシア教の活動を帝国が認めているということは十分に理解していたため、その怒りは必然的に帝国に向けられることになる。
そのせいで帝国は貴族との関係が悪化してしまうという最悪の結果を迎えることになった。つまり、前回の苦情の件とは実害が出ている点で全く異なるということなのだ。
案の定、教皇は皇帝に呼び出され、最終勧告を受けてしまう。さらには帝国に被害を与えたとして賠償金の制約まで契約させられてしまったのだ。
そんなことがあれば当然、問題は解決したと聞いていた教皇はマグナ大司教を呼び出し、叱責することとなる。
「貴様、本当にいい度胸をしているな。今回の賠償に使われた金はすべて貴様に補填してもらうぞ。それと、今すぐにクレハ商会に謝罪に行き、和解したという書面を用意してこい。次に私の目の前に顔を出したときに問題が解決していなければ貼り付けにしてやる。」
だからこそ、クレハに許してもらえたと考えていたマグナ大司教はクレハのせいで大変なことになったと怒り狂うのであった。
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